予想外......とは言い切れない民進党のハデな負けっぷり。

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びっくりびっくり。12日に投開票された台湾の立法委員選挙で、民主進歩党が予想外にハデに負けました。

党派別の勢力図は、
・ 中国国民党:81議席 (71.7%)
・ 民主進歩党:27議席 (23.9%)
・ 無党団結聯盟:3議席
・ 親民党:1議席
・ 無所属:1議席

ということで、結論から言うと、国民党が大きく議席を伸ばし(2004年の立法委員選挙時の議席占有率は25.1%だけど、親民党と合わせた場合、50.2%)、民進党が1/4割れを起こし(同39.6%)、台湾団結聯盟や新党は議席を全て失った。というもの。

このあいだ大丈夫かな、と思っちゃう日本メディアの立法委員選挙の伝え方。で、
> 与党の議席が4割にとどまっても一概に「敗北」と言えないのは明らかだと思うんだけど、
とか、
> たぶん民進党は45~50くらい、国民党は50~55くらい(いずれも小政党や無所属の動向によってはプラスアルファ)だと思うよ。
とか書いたけど、すこーんと外れてしまいました。はぅぅ。偉そうなこと書いて本当にごめんなさい。

まず、この数字的な捉え方だけど、国民党の大圧勝で民進党の大敗北かと言うと、一概にそうとも言い切れないと思う。言い訳じゃなくてさ。前回のエントリーで、郵政解散に絡めて
> あの時自民党は小選挙区で47.77%の得票で73%の議席を占めたんです。
って書いたけど、今回国民党はだいたい50%強の得票(選挙区53.5%、比例区51.23%)で7割強の議席を得たんだけど、選挙区に限って言えば、53.5%で78.1%の議席を獲得してます。むむむ。小選挙区制恐るべし。もっと言っちゃうと、民進党は38.17%の票を得たにも係わらず、17.8%しか議席を取れなかったという。
おっと。こうやって書くとあたかも選挙制度のせいにしちゃってるようにも見えるので、過去10年間の主な選挙での各党の得票率を見てみると、こうなります。

   
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と、立法委員選挙に限って言えば、実は民進党にとって最も票を得た選挙でもあったんです。というわけで、必ずしも「民進党離れが進んだ」「台湾の国民は独立より統一を選んだ」なんてことは簡単には言えないんじゃないかな、というのが素直な感想。もっとも、今回から始まった小選挙区制を考えれば、二大政党制に進むことを考えたら本来もっと多くの票が積めたんじゃないかというのもあるし、何より8年間の与党政権(議会少数なので必ずしも順風満帆ではないにせよ)を考えれば支持を大きく伸ばせなかったのはおかしい、というのも正しいと思う。皮肉なことに選挙制度だけが変わって、戦い方にしろメディア体制にしろ十年一日だったっていうのもあるし。なので、負けてなお強し、なんてとても言えるレベルじゃないけれど、負けたけど死んではいない、とは言えるんじゃないかな。

さてさてここで脱線。
実は今回の数字って、前回のエントリーで予想できたんじゃないか?って今さらながらに思い始めています。わあ後出しじゃんけんきたー。というのも、
> 台湾TVBSテレビの世論調査では、国民党が支持率65%を集めているのに対し、民進党は29%にとどまっている。
っていう北海道新聞の記事を一笑に付したんだけど、よくよく考えたら2005年の北高市長選挙であった「国民党系メディアの予想する国民党系の得票率は8掛けする」という法則を考えれば、65%×8割=52%でだいたいぴったりだ。おまけに、上にわざわざ郵政解散のときの議席の傾き方を思い出せば、この勢力図は予想できたんじゃないの?という気がしなくも無い。

さて、話を戻しましょ。ここで当然再来月に迫った総統選挙への影響、そして5月から始まる新勢力での立法院への影響について注目が集まるわけで。東亜のスレをみていていちばん多かったのは「民進党オワタ」なんだけど、上に書いたように必ずしも「終了のお知らせ」では無いと思う。そしてちらちらと見られたのが「国民党が勝ちすぎたから反動が来るのでは」というのだけど、これも過去の投票率や投票傾向を見ると、どうも立法委員選挙と異なってくるから、そのまんまあてはめるのは(反動も含めて)当てはまらないきがする。

一つ目の鍵は、民進党のすばやい対応。党主席を兼任していた陳水扁・総統が、12日夜にはもう党主席を引責辞任。

謝長廷、総統選挙に向けラストスパート 党代理主席就任へ
http://www.libertytimes.com.tw/2008/new/jan/13/today-fo2.htm (自由時報)
後任として謝長廷が代理主席に就任すると見られていることから、これで文字通りの挙党体制に。国民党のイメージが馬英九・総統選挙候補者>>(越えられない壁)>>呉伯雄・党主席だったのを考えれば、これで両党が実質的に総統選挙に向けてガチンコ状態に。結局マイナスのイメージを払拭し切れなかった陳水扁が前面から退き、謝長廷がどこまで得意の政策論争で国民党の一世代前の選挙運動を打破できるか。

民進党は陳水扁を罰せよ、国民党は緑系の有権者を慰めよ
http://www.udn.com/2008/1/13/NEWS/NATIONAL/NATS2/4178531.shtml (聯合報)
と、13日の聯合報の社論は書いてるけど、さてここで「8年間の失政」と毎度毎度好き放題叩いた陳水扁が一歩退いちゃったことで、これからいったいどうするんだろうという素朴な疑問。「同じ民進党だから、やっぱり腐敗してるからダメだ」と書けば「お前が言うな」だし、「謝長廷にも汚職の疑惑があった」と書いても「お前が言うな」になるんだけど、やっぱり藍色はネガティブキャンペーン全開の選挙戦になっちゃうんだろなあ。

もう一つは、今回の立法委員選挙で民進党が上積みできなかった本土派の票をどこまで取り返せるか。今回の立法委員選挙はちょうど去年の参議院選挙に近い状態なんじゃないかなと思ってます。かたや「美しい日本」「戦後レジームの脱却」という概念的かつ大きなテーマを掲げたのに対して、「国民の生活が第一」という具体的かつ身近なテーマをぶつけたあれです。そもそも政治家が「国民の生活が第一」なんていうのは当たり前の話で、そんなことを野党が掲げるという状況を作った与党がおバカな話だし、いわんや「国民の生活が第一、そりゃそうだ、で、それからどうした」にならずに票が伸びるっていうんだから怖いお話です。アイデンティティだけでは飯が食えない、というのは今回の敗戦で民進党もわかったはず。と同時に、今回「国民の生活が第一」という政治家として当たり前のことができていなかったために逃がした票を再び獲得することができなければ、永遠に今の犠牲がMaxということになるわけだし。また逆に言うと、今回そうした批判の声の受け皿となった国民党は、謝長廷と馬英九というキャラを考えると、国民党が今回過半数の票を獲得したからと言ってうかうかできないと思うよ。

台湾は一党独裁体制に逆戻りしてしまうのか?
http://www.libertytimes.com.tw/2008/new/jan/13/today-t1-2.htm (自由時報)
あ、でもこの辺見ると自由時報は頭の切り替えができてないかも。

最後の鍵は、投票率。過去10年の総統選挙・立法委員選挙を見ると、4回の立法委員選挙は58.50%~68.09%であるのに対し、総統選挙は2回とも80%を超えている。もちろん全体的に下降傾向であるとはいえ、この10~20%の分の票をどちらが得るのか、というのが大きな鍵。とかく浮動票はメディアの力が左右するけれど、これをどちらが制するのか。あ、違うな。どこまで台湾の国民がメディアに引っ張られないか、というのにかかっていると思う。

さて、いずれにせよ5月以降の立法院は今回の選挙で選ばれた立法委員たちが席に座ります。さっそく今の段階から、王金平・立法院長(中国国民党)の留任が予想されてますね。馬英九が王金平を抑えておきたいっていう気持ちもあるのかもしんないけど。

王金平・立法院長、4連続で就任へ
http://www.libertytimes.com.tw/2008/new/jan/13/today-fo15-2.htm (自由時報)
今回、実は親民党なども含めると、泛藍系で3/4を超える議席を獲得しています。前回のエントリーで「2/3を超えると総統の罷免案を可決させ国民投票まで持っていける」というのを書いたけど、3/4を超えると今度は憲法改正を国民投票にかけることまでできるという超圧倒的多数。ただこれら伝家の宝刀を抜くのか、というのは今回「意外に勝ちすぎた」というのでちょっと怪しいところ。今回、70%の得票で70%の議席、ならともかく、これは53%の票で得たものだから、ある程度は様子を見るんじゃないかなあ、とちょっと甘めの憶測。今回、民進党の票がそこそこ残ったこと、過激な二択を行ったときに緑に戻る票がいくらかあることを想定すると、このへんがのどの骨。たとえば仮に謝長廷が総統になってからさして致命傷でもないミスで罷免案を可決したところで、逆にやぶへびになってしまうんじゃないだろうか、というのは、ちょっと考えられる。逆に馬英九が仮に総統になったとして、改憲までもっていけるかというと、これまた同様の理由で怪しい。切るも切らぬもそうとう頭を使うことになりそう。立法院の動き(いわゆる国会運営)は国民党が握ることは間違いないけれど、国を二分するような問題については、国民党独裁下の時代に逆行するようなところまではいかないんじゃないかなあ。
これについては国民党も総統選挙へのゆれ戻しを警戒してか

馬英九:少数の人の声を聞く
http://www.udn.com/2008/1/13/NEWS/NATIONAL/NATS2/4178531.shtml (聯合報)
呉伯雄:国会の多数を濫用することはない
http://www.udn.com/2008/1/13/NEWS/NATIONAL/NATS2/4178533.shtml (聯合報)
なんて火消しに躍起だけど、さあどうだろう?否決されるのをわかっていながら総統罷免案を3回も出して立法院を空転させたのは誰さ。軍購案を何度潰したか覚えているのかさ。

思わぬ度合いまで色塗りが変わってしまった台湾の政治勢力図、2ヶ月後、そのカンバスの上に重ねて塗られる色ははたしてどっち?

★ 追記。
敬愛すべき御家人さんも取り上げていたのでTB&Link。
台湾立法院選挙:勝者も敗者も,変わらなきゃ。

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このページは、◆YAUCHInowAが2008年1月13日 21:54に書いたブログ記事です。

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