順風満帆......とは言い切れない馬英九の微妙な勝ちっぷり。
22日に投開票された台湾の中華民国総統選挙だけど、中国国民党の馬英九・蕭萬長コンビが民主進歩党の謝長廷・蘇貞昌に勝利して終わりました。事前の報道では逃げる馬、追う謝という内容が多かったけど、ふたを開けてみれば、以下の通り。
当 馬英九・蕭萬長 7,658,724(58.45%)
謝長廷・蘇貞昌 5,445,239(41.55%)
さて、これをはたして「220万票差の圧勝」や「台湾オワタ」と見てよいのかは、実はけっこう微妙すぎる数字なので困ったところなんです。もちろん、これによって今後4年弱は、馬英九が総統を務め立法院の3/4を国民党が占めるという「馬英九時代」が来るのは間違いないのです。ところが、はたしてそこまで馬英九にとってバラ色かといえるかは非常に怪しいところ。時間とスペースの都合もあるので、中国内部の話やアメリカなどの外的要因はひとまずおいておいて、選挙結果と台湾内部の状況を念頭にさらっと書くことにします。
今回の投票結果、日本ではなかなかお目にかかれない221万差(実際には、2003年の東京都知事選挙で石原知事が次点に227万票差をつけていることもあったけど、309万vs82万だし)という差だけど、予想より大きいとも小さいとも言える微妙なところ。
意外に取ったな、と思う最大の理由は、直前の藍系メディアの支持率という点。定期的に世論調査を行うTVBSや聯合報の数字を見ても、TVBSが49~53%、聯合報が49~55%と、「藍系メディアの数字に80%~90%の数字を掛ければ藍系候補のマジな数字が出る」とずっと言ってきた身としては、これが裏切られた形となってびっくり。って、これはメディアを褒めてるだけか。
いずれにせよ、グリーンカードにしろ直前の台湾維新館への突撃にしろチベット情勢の余波にしろ、俄然防戦一方(というかこの人の攻める政策少ないんだけど)の中でここまで持っていったのはたいしたものだと思う。
同時に、あれっ?と思ったのは、1月の立法委員選挙との数字の比較。
予想外......とは言い切れない民進党のハデな負けっぷり。で、総統選挙になると10~20%投票率が上昇するので、
> この10~20%の分の票をどちらが得るのか、というのが大きな鍵。
って書いたんだけど、その1月の立法委員選挙での国民党と民進党の得票率は、51.2~53.5%:36.9~38.5%と、およそ1.39:1、泛藍:泛緑で見てもほとんどこれと変わらなかったんです(立法委員選挙では小政党がいるので、両党の比率で比較することに)。で、今回の得票率を見ると、1:41:1と、そんなに変わらない。一見すると、あの立法委員選挙の時と流れが変わらなかったと言えそう。事実、今回民進党は南部の高雄市と台南市で落として(Wikipediaでは「初めて」ってなってるけど、96年の総統選挙では負けてるから正しくないんだよね。直さないと)たり、いわゆる「南部は民進党」が食われた感じになってるけど、色塗りしてみると、立法委員選挙のそれとけっこう近いものがあったりするし。
ただ、これを果たして支持の風潮があまり変わらなかったと見るべきか、浮動票をお互いそのままの比率で(どちらかと言えば国民党側が取り込んだ形なのか)取り込んだと見るべきか、難しいところ。どちらかと言えば、この分をやや優勢に引き込んだ馬英九や国民党の自力が証明されたと言ったほうがいいのかもしんない。いずれにせよ、一定の考えとして、台湾における支持基盤の新たな地図やその勢力比は重ねて確認することができたのは間違いないと思う。
悩ましいのは、同時に行われた公民投票。これ、日本だとほとんど報道されてないんだよね。今回投票が行われたのは、次の2つ。
○ 第5案
「1971年に中華人民共和国が中華民国に代わって国連に加盟し、台湾は国際社会の孤児となりました。台湾の国民意志を強烈に表明し、台湾の国際社会での地位および参加を高めるため、政府が『台湾』の名義で国連に加盟することに同意しますか?」
○ 第6案
「わが国の国連への復帰およびその他国際組織の加盟申請の際、実務的、弾力的な戦術で、中華民国名義または台湾名義、あるいはその他の参加可能かつ尊厳ある名称で、国連の復帰およびその他国際組織の加盟を申請することに同意しますか?」
(以上、台湾週報から)
前者は、民進党が推進する「台湾による国連への新規加盟案」、後者は国民党が支持する「中華民国またはその他尊厳ある名称による国連復帰案」です。3月前半、国民党は呉伯雄・党主席が前者のボイコットと後者の支持を表明し、一方民進党はというと陳水扁・総統がボイコットをしないことを呼びかけてました。陳・総統にしてみれば、何よりも避けなければけいないことは、新規加盟案が反対多数で否決されることではなく、投票率が過半数に達せず不成立になる、つまり台湾の国民は「いかなる名称で国連に参加するか」以前に「国連に参加することに興味なし」というメッセージを発信することなわけ。
ところが蓋を開けてみたらあらびっくり。
○ 第5案(投票率:35.82%)
・同意 5,529,230(94.01%)
・不同意 352,359(5.99%)
○ 第6案(投票率:35.74%)
・同意 4,962,309(87.27%)
・不同意 724,060(12.73%)
と、両案とも不成立になってしまったのはある意味予想通りだし、それこそ「公民投票を総統選挙の材料に使おうとしている」と主張した国民党(だからこそ、両方ボイコットすることにも「尊重する」と言ってたわけだし)にとっては、望ましい結果ではあったのだけど、票に込められた思いを汲むとかなり悩ましいところ。投票率、同意の票数、不同意の票数を見ても、投票した人たちの主張は、「国連に加盟するなら台湾>その他」なのは自明。もちろん、総統選挙との投票率の差を考えれば、公民投票をボイコットした人たちの考えを考慮しなきゃいけないけど、「台湾名義での国連加盟」を求める人たちが553万人もいたことは、馬英九も激しく自覚しないといけない。今回の総統選挙の結果を受けて、産経新聞は【視点】集票力失った「台湾人意識」なんて記事を書いてる(おいらあんまりこの長谷川記者の書く記事は好きじゃない)けど、決して今回の両結果をもって「台湾人意識が死んだ」と判断しちゃダメなんです。立法委員選挙のときも書いたけど「アイデンティティじゃ飯は食えない。でもアイデンティティは捨てていない」なんです。
ここで、気がついた人がいるかもしれないけれど、この第5案の同意票数は、国民党にとってもう一つの誤算になってるはず。というのも、この553万という票は謝長廷が総統選挙で獲得した545万票よりも多いんです。つまり、単純に考えて「謝長廷に投票した人が公民投票第5案に全部同意票を投じていたとしても、馬英九に投票していた人のうち公民投票に同意票を投じていた人が少なからずいる」ということ。もっと極端なことを言えば、馬英九は自分に票を入れた人たちの中には、例え三通をはじめとする中国との通商や交流を支持しようとも、それはあくまで「台湾と中国という関係」を念頭に置いている人たちがいるっていうことを忘れちゃならないんです。なまじボイコットなんか呼びかけるから、馬英九にしてみれば「自分に投票した人が、公民投票ではホントんとこどう思っているのか」いうのがわからなくなっちゃったというお馬鹿な話。どうすんのかな。「そんなの関係ねえ!」なのかな。
突然ここで閑話休題。っていうか後から書き足したんだけど。
【台湾】台湾総統に馬英九氏 8年ぶりに国民党政権~民進党に220万票以上の「圧勝」、国連加盟投票は不成立[03/22]
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1206196190/
を見て思ったけど、やっぱ長谷川さんだめぽ。「圧勝した」とか公民投票の内容に触れてなかったりとか。なぜか台湾の記事では産経と毎日はイマイチだなあ。
既に馬英九は当選後の挨拶で、「馬英九あるいは蕭萬長の個人的勝利ではなく、国民党一党の勝利でもなく、台湾の勝利だ。今回の勝利は、国民が国民党の完全執政を支持したものだ」と述べているけど、これはけっこう難しいんじゃないかな。以前のように「本省人=民進党、外省人=国民党」という構図が図らずも明確に崩れてしまったのがわかった以上、「完全執政」を付託した国民党本土派をないがしろにすることはできないもの。投票しなかった40%の人たちの真意を汲むことができなければ、突き上げはけっこう早いんじゃないかな?もっとも、これは逆に民進党にも同じことが言えて、旧態依然の対立軸はさくっと切り離さないと、日本で「護憲」だけにこだわってる政党と同じになっちゃうよ。も一つついでに書けば、上に書いた構図もさることながら「独立派=民進党、統一派=国民党」っていう構図を後生大事にしている日本のメディアや東亜板の人たちも、そろそろそういう考えを中国製品と一緒に捨てちゃわないと、肝心なことが見えなくなっちゃうよ。
馬英九:国民は国民党による完全執政を支持
http://www.udn.com/2008/3/22/NEWS/NATIONAL/NATS6/4268874.shtml (聯合報)
と、ここで両岸関係はひとまず置いておこうとした矢先に不思議なニュースが入ってて泣きそうになった。
まずは、北京にある中国社会科学院台湾研究所の研究員(しかもなんで王建民なんて名前なんだよ!)が、「両岸関係が好転する機会」と述べたもの。両岸政策について、いわゆる「九二共識」を承認している国民党であれば、独立も中国化も行わない現状維持によって、良好な関係を築き経済交流も活発化して台湾の経済も活性化するだろう、というもの。お前は馬英九のスポークスマンか。というか、まったく同じ主張を北京がしている時点で大きな危険を孕んでいるのは明白だと思うんですけど。それでもやっちゃうのかなあ。共通市場政策は。
もっと驚いたのは、台湾にある淡江大学戦略研究所の教授の談話。「北京が融和し、WHAやWHOにも参加することができるかもしれない」「『一中市場』の中国傾斜の問題については、馬英九が慎重に行動し、これらの憂慮を払拭できれば新たな局面が開けるだろう」と、大丈夫かこの人、っていうお花畑な未来予想図。そんなわけないじゃん。2004年に陳水扁が再選した後、微妙に中国に扉を開けたとき、中国がやったことって反分裂国家法の制定だよ。北京が融和するわけないじゃない。もぉ......。
馬英九が勝利 北京学者:両岸関係は改善のチャンス
http://www.cna.com.tw/menu/NewsDetail.aspx?strCatL=CN&strSearchDate=&strNewsID=200803220306&strType=PM (中央通訊社)
馬英九が勝利 学者、台米・両岸関係は楽観できる
http://www.cna.com.tw/menu/NewsDetail.aspx?strCatL=IPL&strSearchDate=&strNewsID=200803220325&strType=PD (中央通訊社)
となると、悪い意味で予想がつかない言動をするファンタジスタ馬英九についての当面の注目は、その政策もさることながら、8年ぶりとなる国民党による人事。東亜板ではしきりに「馬英九が当選して台湾は反日になる」「中国に併合される」と一所懸命に慌てているけれど、そもそも1945年以来50年以上にわたって国民党政権下だったわけだし、馬英九が政権を担ってすぐに中国に併呑されるかと言うとそれもないでしょ。たぶん、馬英九がやるって決めてることなんて、台湾民主紀念館を中正紀念堂に戻すことくらいだし。ただ、今回の有権者の判断は確かに「中国との融和」だったけど、それが「一中市場」としての融和なのか「両岸市場」としての融和なのか、馬英九が判断を誤りかねないという危険性はかなりでかいけどね。というか、おいらの中では既に誤る前提で書いてますけど。
えっと、そうだ人事だ人事。馬英九の発言のハチャメチャっぷりはよく知られているので、馬英九政権を支える人間まで馬鹿だと困っちゃうからこれは大事なこと。得をするのは中国だけだもの。今回の総統選挙の最中でも、謝長廷からの批判が出ると、「後でどうすんのかなあ」という新たな言い訳や新政策が飛び出したけど(開放しても基本的に労働者は受け入れないとかね)、それをその場しのぎとしてではなく、柔軟とか野党とも協調できるとか最大限にプラス思考で見ることができるか微妙なところ。陳政権以上に、スタッフが重要になってくると思うんです。馬英九としても台湾としても。となると、とりわけ行政権を司る行政院長、また大臣クラスで言えば、両岸関係でいかに傾斜し政権交代後の各国との関係を適当に維持するという重要な役割を担う外交部長と国防部長、馬英九自身を含めた腐敗汚職問題に関していかに目を瞑る人を置くか気になる法務部長、とかく民進党の「脱中国化」を批判してきた手前限界いっぱいまで揺れ戻しを行える人材が来るのかという教育部長あたりは注目。あ、大陸委員会の主任委員も気になるなあ。
既に台湾メディアの一部では予想が始まっているみたいだけど、馬英九の当選で「台湾オワタ」と言っている人たちも、せめてこのへんくらいまでは注目してみてもいいんじゃないかな。
★ 追記。
やっぱり御家人の視点というか見るべきポイント、でもってそれを的確かつ簡潔にまとめるところはすごいなあと思ったので、
台湾総統選:勝者も敗者も,変わらなきゃ。
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当 馬英九・蕭萬長 7,658,724(58.45%)
謝長廷・蘇貞昌 5,445,239(41.55%)
さて、これをはたして「220万票差の圧勝」や「台湾オワタ」と見てよいのかは、実はけっこう微妙すぎる数字なので困ったところなんです。もちろん、これによって今後4年弱は、馬英九が総統を務め立法院の3/4を国民党が占めるという「馬英九時代」が来るのは間違いないのです。ところが、はたしてそこまで馬英九にとってバラ色かといえるかは非常に怪しいところ。時間とスペースの都合もあるので、中国内部の話やアメリカなどの外的要因はひとまずおいておいて、選挙結果と台湾内部の状況を念頭にさらっと書くことにします。
今回の投票結果、日本ではなかなかお目にかかれない221万差(実際には、2003年の東京都知事選挙で石原知事が次点に227万票差をつけていることもあったけど、309万vs82万だし)という差だけど、予想より大きいとも小さいとも言える微妙なところ。
意外に取ったな、と思う最大の理由は、直前の藍系メディアの支持率という点。定期的に世論調査を行うTVBSや聯合報の数字を見ても、TVBSが49~53%、聯合報が49~55%と、「藍系メディアの数字に80%~90%の数字を掛ければ藍系候補のマジな数字が出る」とずっと言ってきた身としては、これが裏切られた形となってびっくり。って、これはメディアを褒めてるだけか。
いずれにせよ、グリーンカードにしろ直前の台湾維新館への突撃にしろチベット情勢の余波にしろ、俄然防戦一方(というかこの人の攻める政策少ないんだけど)の中でここまで持っていったのはたいしたものだと思う。
同時に、あれっ?と思ったのは、1月の立法委員選挙との数字の比較。
予想外......とは言い切れない民進党のハデな負けっぷり。で、総統選挙になると10~20%投票率が上昇するので、
> この10~20%の分の票をどちらが得るのか、というのが大きな鍵。
って書いたんだけど、その1月の立法委員選挙での国民党と民進党の得票率は、51.2~53.5%:36.9~38.5%と、およそ1.39:1、泛藍:泛緑で見てもほとんどこれと変わらなかったんです(立法委員選挙では小政党がいるので、両党の比率で比較することに)。で、今回の得票率を見ると、1:41:1と、そんなに変わらない。一見すると、あの立法委員選挙の時と流れが変わらなかったと言えそう。事実、今回民進党は南部の高雄市と台南市で落として(Wikipediaでは「初めて」ってなってるけど、96年の総統選挙では負けてるから正しくないんだよね。直さないと)たり、いわゆる「南部は民進党」が食われた感じになってるけど、色塗りしてみると、立法委員選挙のそれとけっこう近いものがあったりするし。
ただ、これを果たして支持の風潮があまり変わらなかったと見るべきか、浮動票をお互いそのままの比率で(どちらかと言えば国民党側が取り込んだ形なのか)取り込んだと見るべきか、難しいところ。どちらかと言えば、この分をやや優勢に引き込んだ馬英九や国民党の自力が証明されたと言ったほうがいいのかもしんない。いずれにせよ、一定の考えとして、台湾における支持基盤の新たな地図やその勢力比は重ねて確認することができたのは間違いないと思う。
悩ましいのは、同時に行われた公民投票。これ、日本だとほとんど報道されてないんだよね。今回投票が行われたのは、次の2つ。
○ 第5案
「1971年に中華人民共和国が中華民国に代わって国連に加盟し、台湾は国際社会の孤児となりました。台湾の国民意志を強烈に表明し、台湾の国際社会での地位および参加を高めるため、政府が『台湾』の名義で国連に加盟することに同意しますか?」
○ 第6案
「わが国の国連への復帰およびその他国際組織の加盟申請の際、実務的、弾力的な戦術で、中華民国名義または台湾名義、あるいはその他の参加可能かつ尊厳ある名称で、国連の復帰およびその他国際組織の加盟を申請することに同意しますか?」
(以上、台湾週報から)
前者は、民進党が推進する「台湾による国連への新規加盟案」、後者は国民党が支持する「中華民国またはその他尊厳ある名称による国連復帰案」です。3月前半、国民党は呉伯雄・党主席が前者のボイコットと後者の支持を表明し、一方民進党はというと陳水扁・総統がボイコットをしないことを呼びかけてました。陳・総統にしてみれば、何よりも避けなければけいないことは、新規加盟案が反対多数で否決されることではなく、投票率が過半数に達せず不成立になる、つまり台湾の国民は「いかなる名称で国連に参加するか」以前に「国連に参加することに興味なし」というメッセージを発信することなわけ。
ところが蓋を開けてみたらあらびっくり。
○ 第5案(投票率:35.82%)
・同意 5,529,230(94.01%)
・不同意 352,359(5.99%)
○ 第6案(投票率:35.74%)
・同意 4,962,309(87.27%)
・不同意 724,060(12.73%)
と、両案とも不成立になってしまったのはある意味予想通りだし、それこそ「公民投票を総統選挙の材料に使おうとしている」と主張した国民党(だからこそ、両方ボイコットすることにも「尊重する」と言ってたわけだし)にとっては、望ましい結果ではあったのだけど、票に込められた思いを汲むとかなり悩ましいところ。投票率、同意の票数、不同意の票数を見ても、投票した人たちの主張は、「国連に加盟するなら台湾>その他」なのは自明。もちろん、総統選挙との投票率の差を考えれば、公民投票をボイコットした人たちの考えを考慮しなきゃいけないけど、「台湾名義での国連加盟」を求める人たちが553万人もいたことは、馬英九も激しく自覚しないといけない。今回の総統選挙の結果を受けて、産経新聞は【視点】集票力失った「台湾人意識」なんて記事を書いてる(おいらあんまりこの長谷川記者の書く記事は好きじゃない)けど、決して今回の両結果をもって「台湾人意識が死んだ」と判断しちゃダメなんです。立法委員選挙のときも書いたけど「アイデンティティじゃ飯は食えない。でもアイデンティティは捨てていない」なんです。
ここで、気がついた人がいるかもしれないけれど、この第5案の同意票数は、国民党にとってもう一つの誤算になってるはず。というのも、この553万という票は謝長廷が総統選挙で獲得した545万票よりも多いんです。つまり、単純に考えて「謝長廷に投票した人が公民投票第5案に全部同意票を投じていたとしても、馬英九に投票していた人のうち公民投票に同意票を投じていた人が少なからずいる」ということ。もっと極端なことを言えば、馬英九は自分に票を入れた人たちの中には、例え三通をはじめとする中国との通商や交流を支持しようとも、それはあくまで「台湾と中国という関係」を念頭に置いている人たちがいるっていうことを忘れちゃならないんです。なまじボイコットなんか呼びかけるから、馬英九にしてみれば「自分に投票した人が、公民投票ではホントんとこどう思っているのか」いうのがわからなくなっちゃったというお馬鹿な話。どうすんのかな。「そんなの関係ねえ!」なのかな。
突然ここで閑話休題。っていうか後から書き足したんだけど。
【台湾】台湾総統に馬英九氏 8年ぶりに国民党政権~民進党に220万票以上の「圧勝」、国連加盟投票は不成立[03/22]
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1206196190/
を見て思ったけど、やっぱ長谷川さんだめぽ。「圧勝した」とか公民投票の内容に触れてなかったりとか。なぜか台湾の記事では産経と毎日はイマイチだなあ。
既に馬英九は当選後の挨拶で、「馬英九あるいは蕭萬長の個人的勝利ではなく、国民党一党の勝利でもなく、台湾の勝利だ。今回の勝利は、国民が国民党の完全執政を支持したものだ」と述べているけど、これはけっこう難しいんじゃないかな。以前のように「本省人=民進党、外省人=国民党」という構図が図らずも明確に崩れてしまったのがわかった以上、「完全執政」を付託した国民党本土派をないがしろにすることはできないもの。投票しなかった40%の人たちの真意を汲むことができなければ、突き上げはけっこう早いんじゃないかな?もっとも、これは逆に民進党にも同じことが言えて、旧態依然の対立軸はさくっと切り離さないと、日本で「護憲」だけにこだわってる政党と同じになっちゃうよ。も一つついでに書けば、上に書いた構図もさることながら「独立派=民進党、統一派=国民党」っていう構図を後生大事にしている日本のメディアや東亜板の人たちも、そろそろそういう考えを中国製品と一緒に捨てちゃわないと、肝心なことが見えなくなっちゃうよ。
馬英九:国民は国民党による完全執政を支持
http://www.udn.com/2008/3/22/NEWS/NATIONAL/NATS6/4268874.shtml (聯合報)
と、ここで両岸関係はひとまず置いておこうとした矢先に不思議なニュースが入ってて泣きそうになった。
まずは、北京にある中国社会科学院台湾研究所の研究員(しかもなんで王建民なんて名前なんだよ!)が、「両岸関係が好転する機会」と述べたもの。両岸政策について、いわゆる「九二共識」を承認している国民党であれば、独立も中国化も行わない現状維持によって、良好な関係を築き経済交流も活発化して台湾の経済も活性化するだろう、というもの。お前は馬英九のスポークスマンか。というか、まったく同じ主張を北京がしている時点で大きな危険を孕んでいるのは明白だと思うんですけど。それでもやっちゃうのかなあ。共通市場政策は。
もっと驚いたのは、台湾にある淡江大学戦略研究所の教授の談話。「北京が融和し、WHAやWHOにも参加することができるかもしれない」「『一中市場』の中国傾斜の問題については、馬英九が慎重に行動し、これらの憂慮を払拭できれば新たな局面が開けるだろう」と、大丈夫かこの人、っていうお花畑な未来予想図。そんなわけないじゃん。2004年に陳水扁が再選した後、微妙に中国に扉を開けたとき、中国がやったことって反分裂国家法の制定だよ。北京が融和するわけないじゃない。もぉ......。
馬英九が勝利 北京学者:両岸関係は改善のチャンス
http://www.cna.com.tw/menu/NewsDetail.aspx?strCatL=CN&strSearchDate=&strNewsID=200803220306&strType=PM (中央通訊社)
馬英九が勝利 学者、台米・両岸関係は楽観できる
http://www.cna.com.tw/menu/NewsDetail.aspx?strCatL=IPL&strSearchDate=&strNewsID=200803220325&strType=PD (中央通訊社)
となると、悪い意味で予想がつかない言動をするファンタジスタ馬英九についての当面の注目は、その政策もさることながら、8年ぶりとなる国民党による人事。東亜板ではしきりに「馬英九が当選して台湾は反日になる」「中国に併合される」と一所懸命に慌てているけれど、そもそも1945年以来50年以上にわたって国民党政権下だったわけだし、馬英九が政権を担ってすぐに中国に併呑されるかと言うとそれもないでしょ。たぶん、馬英九がやるって決めてることなんて、台湾民主紀念館を中正紀念堂に戻すことくらいだし。ただ、今回の有権者の判断は確かに「中国との融和」だったけど、それが「一中市場」としての融和なのか「両岸市場」としての融和なのか、馬英九が判断を誤りかねないという危険性はかなりでかいけどね。というか、おいらの中では既に誤る前提で書いてますけど。
えっと、そうだ人事だ人事。馬英九の発言のハチャメチャっぷりはよく知られているので、馬英九政権を支える人間まで馬鹿だと困っちゃうからこれは大事なこと。得をするのは中国だけだもの。今回の総統選挙の最中でも、謝長廷からの批判が出ると、「後でどうすんのかなあ」という新たな言い訳や新政策が飛び出したけど(開放しても基本的に労働者は受け入れないとかね)、それをその場しのぎとしてではなく、柔軟とか野党とも協調できるとか最大限にプラス思考で見ることができるか微妙なところ。陳政権以上に、スタッフが重要になってくると思うんです。馬英九としても台湾としても。となると、とりわけ行政権を司る行政院長、また大臣クラスで言えば、両岸関係でいかに傾斜し政権交代後の各国との関係を適当に維持するという重要な役割を担う外交部長と国防部長、馬英九自身を含めた腐敗汚職問題に関していかに目を瞑る人を置くか気になる法務部長、とかく民進党の「脱中国化」を批判してきた手前限界いっぱいまで揺れ戻しを行える人材が来るのかという教育部長あたりは注目。あ、大陸委員会の主任委員も気になるなあ。
既に台湾メディアの一部では予想が始まっているみたいだけど、馬英九の当選で「台湾オワタ」と言っている人たちも、せめてこのへんくらいまでは注目してみてもいいんじゃないかな。
★ 追記。
やっぱり御家人の視点というか見るべきポイント、でもってそれを的確かつ簡潔にまとめるところはすごいなあと思ったので、
台湾総統選:勝者も敗者も,変わらなきゃ。
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