伸びなくたって胡六点。

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前々回の「「逢九必乱」の年がやってきた。」で馬英九総統の元旦文告について書いたんですが、「31日の胡錦涛発言との関係について触れないのはどうかな」と、ふと思っちゃいました。ぶっちゃけ、31日の胡錦涛発言、いわゆる胡六点を受けて馬英九が喋ったとはとうてい思えないんですが、2009年以降の両岸関係を考える際の中国側の基本スタンスとも言うべき発言なので、時期は逆転しちゃうけど改めて取り上げますです。

この胡六点と呼ばれる発言、「台湾同胞に告げる書」30周年を記念して去年の大晦日に北京で開かれた会議で、胡錦涛国家主席が行った台湾政策に関する6点の提言のことです。NHKが報じていたので立てちゃいました。これ、実は「胡錦涛が何か言ったんだなあ」程度の感覚で立てたんですが、けっこう重要な発言だっていうことに後から気づかされました。
しかも、「台湾同胞に告げる書」30周年っていうメモリアル要素に加え、中台の三通が実現した直後、また馬英九が就任してから7ヶ月あまりで満を持してっていう意味で、タイミングとしても上々のお膳立てがなされてます。
 【中台】中国の胡錦涛国家主席、台湾に安全保障協議の開始などを呼びかけ[12/31]
 http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1230782308/

ちなみに、このスレの>>3でいきなり、
> こんな「呼びかけ」なんて2ch的にもまるで伸びないNEWSだよ。
>      ↓
> >「敵対状態を正式に終息させる話し合いに入り,中台関係の平和的な発展を図る
> >枠組みを構築しよう」と呼びかけました。
なんて言われちゃっただけど、そりゃあぶっちゃけ伸びないよね。でも重要性から言えば、スレは伸びなくてもいいけどこの発言はもっと注目されるべきだと思う。

中国の指導者が台湾問題で方針を示す際、いくつかの項目をまとめて行うので、「(姓)+(提言数)+点or条」と呼ぶことが多いですね。古いものでは、一国二制度に近い考えを示した1981年の葉剣英による「葉九条」、同じく鄧小平による1983年の「鄧六条」、一つの中国を強く打ち出した1995年の江沢民による「江八点」、その胡錦涛バージョンとも言うべき2005年の「胡四点」なんかがあります(江八点に対して当時の李登輝総統が逆提案した「李六点」っていうのもあったけど)。

ここで「胡六点」の扱いで着目しなきゃいけないのかなあと思うのは、1つ目として「江八点」に比べてインパクトが弱いとされた「胡四点」からどう変わったのか、2つ目は「江八点」や「胡四点」に代わるものとなれるのか、3つ目として「胡六点」と「馬英九元旦文告」との関係性や呼応性っていうところかな。

今回の胡六点より前の話にもさらっと触れときます。まずは江沢民の江八点について。これはもともとあった鄧小平の「和平統一、一国両制(平和統一、一国二制度)」という思想をベースにし、「あくまで『一つの中国』を貫くこと」、「その中で両岸関係を発展させること」、「平和的に統一を行うこと」を説いたもの。「一つの中国」を前面に掲げ、台湾を強く牽制しました。
一方、胡四点は具体的な方針というよりもスローガン的な位置付けなのかなと個人的に思います。「『一つの中国』の堅持する原則は決して揺るがない」「平和的統一を勝ち取る努力は決して放棄しない」「台湾人民に希望を託すことを貫徹する方針は決して変わらない」「台湾独立運動への反対は決して妥協しない」というもの。
ところが、今回の胡六点は一転して具体的な政策理念を提供する形を取っています。変化の理由の一つは、2008年に台湾で起きた政権交代がありますね。胡四点は反分裂国家法の制定と前後する時期に発表されたものだけに、台湾側(というより陳水扁政権)の反発に対する緩衝の意味合いもありました。ところが政権が陳水扁から馬英九に交代し、ご存知のように両岸関係はその頃と大きく変わっちゃっています。なので、胡四点とは異なってくるのも江八点とも違ってくるのも必然なんですね。

胡錦涛は31日の発言の中で、鄧小平や江沢民らの政策方針に触れたうえで過去30年間の両岸政策を総括し、あくまで「台湾問題解決の核心は祖国統一の実現にある。その目的は国家主権と完全なる領土の維持及び確保であり、台湾同胞を含む中華の若者たち全体の幸福を追求することにあり、中華民族の偉大さを復興させることにある」と息巻き、あくまで台湾を含んだ形での『一つの中国』を完遂し、平和的な統一こそが台湾を含む中華民族の利益だと述べています。つまり、台湾政策の目的というか前提となる考え方については江八点のそれと変わっていないということですね。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-12/31/content_10586495_1.htm (新華社)

じゃあ具体的に胡-馬という両岸の構図の中でその目的をどうやって果たしていこうかっていうのが胡六点です。
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1.「一つの中国」を遵守し、「台湾独立」という分裂活動には引き続き反対する。大陸と台湾は未だに統一がなされていないが、これは中国の領土や主権が分裂しているのではなく、1940年代後半に発生した国共内戦から続く政治的対立である。
2.三通が実現したが、台湾企業が台湾に投資し活動することには引続き支持する。両岸は総合的な経済協力で合意し、両岸経済の共同発展とアジア太平洋地域の協力体制が互いに連動する道を探る。
3.台湾同胞の郷土を愛する台湾意識は、台湾独立意識とイコールではない。両岸の文化教育交流の協議を希望し、中華文化を通じて精神的な結びつきを強めたい。
4.民進党が台湾独立という分裂活動を停止することを希望する。民進党が台湾独立という立場を変えれば、大陸は正面からこれに応えたい。
5.両岸は交渉の中で不必要な内部消耗を避ける。台湾の国際組織に参加する問題については、「二つの中国」や「一中一台」を作らないという前提の下、両岸の具体的な協議を通じて道理に適った調整を行う。
6.両岸は、国家が未だに統一されていないという特殊な状況の下で、政治関係で具体的な検討や軍事面で安全に連携できる体制を構築すべき。それらは、「一つの中国」のベースの上で、両岸の敵対状態を正式に終了させる協議を行い、平和協議を達成する。
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思い切りがよすぎるほどにはしょりました。全文は下の新華社から読んで。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-12/31/content_10586495_2.htm (新華社)

っていうことで、随所に「対馬英九政権」っぽさと「胡錦涛っぽさ」が出ていますね。そういう意味では完全に江八点を(ベースにしているとは言いつつも)離れたように見えます。注目すべきは1と2と3と4と5と6。って、おい。
スレ立てに使ったNHKの報道を読むと、あたかも胡錦涛が台湾政策を一新させて前向きな共同体制を提示しているようにも見えますが、決してそんなことはないです。1,3,5,6に出てきたように、「一つの中国」という基本姿勢は断固として崩していません。むしろよほど大事なことらしく2回も3回も(もっとか)言ってるしね。
逆に目を引くのが、1に出てきた「領土や主権が分裂しているのではなく政治的対立だ」っていう考え方。これまでの「一つの中国」という言い方は、「分裂している台湾を統一することで『一つの中国』が完成」という前提だったのに、いつの間にか「そうじゃなくって、『一つの中国』の中で異なる政治勢力がある」というふうに、大陸側としても台湾との距離を意図的に近いものにしちゃってますね。いや、実際近くなったと思っているんでしょう。逆に言えば、武力どうこうというよりも政治的対立を解消することにより『一つの中国』は果たせると踏んでいるという余裕すら感じちゃう。
また、4で具体的に民進党の名前が出てきたように、また2,5,6なんかにあるとおり今後3年半の間は国民党政権との間で両岸協議を促進する意図も示しています。NHKも触れているとおり、当面は経済交流が優先になるとは思うんだけど、そんな中でも具体的に6にあるような「敵対状態を終結させる」というフレーズが出てきたことは、けっこう大きな楔ですね。江八点にあった「三通を実現させる」を達成したことや、国共会談の実現なんかが手ごたえにつながっているのかもしれないっす。

そういえば、この翌日に行われたのが馬英九の元旦文告だったのですが、馬英九はかろうじて両岸関係の展望についてこんな風に言っていました。
「両岸の民間交流もまたさらに頻繁となることは、台湾にとってチャンスであり、またチャレンジでもあります。台湾はこの機会にグローバル経済の中の位置づけを高めると同時に、両岸経済貿易関係が日を追うごとにますます深化する際に、積極的に中華民国の主権と台湾の尊厳を守り、自己の政治、社会、文化の特質を効果的に発揮して、台湾の両岸関係に対する長期的な発展、前向きな連動効果を発揮しなければなりません」
最初から台湾向けに喋った胡錦涛と、経済問題という急務を抱えた中で政策の一つとして触れた馬英九とを比べるのは酷なんだけどね。それでもこの二つを比べると、馬英九の押しの弱さというか具体性の無さが目立ってしまいます。ここで「台湾の前途は台湾の2,300万人が民主的に決める」とか一文入っていたら痛烈なカウンターになったと思うんだけど、それはちょっとハードル高いかなあ。
はたして両岸のトップが一致して述べた「経済的な関係を深める」という道の先で、胡錦涛が言うように軍事的な交渉にまで及ぶことになるのかな?それとも馬英九が唱えるように主権と尊厳を主張することかできるのかな?胡六点ががっしりとした基本姿勢の上でかなり切り込んできている中で、馬英九の返しが抽象的かつ「~しなければなりません」という尻すぼみなところを見ると、ちょっと次のラウンドあたりでTKOされるんじゃないかなっていう不安がよぎっちゃうんだよね。
 http://www.taiwanembassy.org/JP/ct.asp?xItem=76379&ctNode=1453&mp=202 (台北駐日経済文化代表処)

馬英九が胡六点に対して公に反応したのは6日、アメリカのシンクタンクの研究員と面会した時のことでした。馬英九は胡六点について「これまで台湾が呼びかけてきたことへの具体的な反応」として捉える一方、その評価については「内容を分析中だ」としています。
そういえば、馬英九は10月に発売された『世界』誌で両岸関係の展望について、
> 「まず経済貿易の面で正常化を図り、続いて台湾の国際空間(国際社会・国際組織への参与)の問題、
> それから平和協定調印を話し合うべきだと考えています(P46)」
なんて言っていたことを考えれば、確かに馬英九政権の提案に大陸側が乗ってきたようにも見える。この話を書いた「あ、それとね?面白いおうまさん 決まってるの?陳雲林を迎えに行くって。」では、
> おいらがいちばん怖いと思うのは、2ステップ目の国際空間での地位確保にコケてしまい、
> 結局いわば「政府と反政府勢力」みたいな構図で和平協議を行う形になってしまうこと。
って偉そうに語ってたけど、胡六点は明確に「『一つの中国』の原則の上で」と言っており、やっぱり国と国として協議が行われる可能性はなさそうです。皮肉なことに、そこを明確にしてきたっていうことがいちばん「具体的な反応」なのかもしれないっす。
馬英九は6日の会談の中で、「台湾の中には異なる意見もあるが、政府はこうした意見にも耳を傾ける。そういう人たちに政府の両岸政策を理解してもらうと同時に、台湾の利益を逸しないようにする」ともコメントしています。上に書いたとおり胡錦涛は民進党の主義主張を一切認めず、「台湾独立の野望を諦めたら相手にしてやってもいいよ」といういかにも中共らしいを発言していました。これを暗に批判していると考えればちょっと頑張ったのかなっていう感じもするんだけど、いまいちインパクトに欠けるんだよね。
 http://www.president.gov.tw/php-bin/prez/shownews.php4?Rid=14871 (中華民国総統府)
 http://www.udn.com/2009/1/7/NEWS/NATIONAL/NATS4/4675737.shtml (聯合報)
 http://www.rti.org.tw/News/NewsContentHome.aspx?NewsID=139756&t=1 (中央廣播電台)

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富士南麓人 :

センセーショナルなニュースとか、何かの出来事が発生したニュースって、ものすごく単純でわかりやすいと思うのですが、
自分は実はこういう地味ながら、何らかの「過程(途上)」にあるニュースというのは、次のアクションへの前触れか?とか、何が起きるか、どう事態が変遷するのか、という想像をして楽しむ上で、過程をヲチする事自体も大変好きです。^^

この内容、地味ではなくてある意味結構凄いと思ったのですが、
1~6項目までの提言内容を追記したら、>>3氏の予想を外れて、もっと面白い展開になっていたのかも。^^

◆YAUCHInowA Author Profile Page:

> ふじさん。
おいらは逆に過程のニュースを捉えるというのがとても苦手ですね。あはは。
頭のお堅いφ★にありがちな「~があった。じゃあ立てるか」みたいな感じで、後になってから「ああ、あの時のあの話はここにつながったのか!」って気がつくことがほとんどです。
このブログでけっこう偉そうなことを書いてますが、途中のニュースをピックアップして「その後の展開」を見るなんていう芸当はおいらには無理ですね。

というか、その典型的な例っていうのが「あー、胡錦涛がそんなこと言ったんだあ」で立てたくだんのスレと、微妙に慌てながら書いたこの記事なんじゃないかなあ。

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このページは、◆YAUCHInowAが2009年1月 8日 22:58に書いたブログ記事です。

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