陳菊おばさんのPower Games。ってあれ?
じゃあ何かタイムリーなニュースでも取り上げるのかって言ったら、そもそもおいらにそんな即時性を期待しちゃいけません。ひどい+板の記者だなあもう。とはいえせっかくなので今日は久しぶりに陳菊おばさんの話でも。
22日の台湾各紙を賑わせたのが陳菊・高雄市長の訪中でした。今年7月に高雄で開催されるワールドゲームズ2009のPRのためなんですが、市長自ら渡ったというのが大きなポイントでっす。あ、ワールドゲームズが何なのかわからない人は調べてください。綱引きももちろん含まれてます。
さて、高雄市は台湾南部に位置して台北市に次ぐ規模を持つ行政院直轄市。そこの市長ともなれば行政院会議に出席できるなど、政治的なポジションという点では日本で言うはしげとは違うのだよはし(ry。おまけにそこに座るのは2006年の選挙で歴史的接戦を制した民進党の陳菊。さて、そういう肩書きとカラーの人が訪中したとなればいろんな意味や憶測が流れるってわけですね。
ちなみに、2006年の選挙時のスレで見かけた「陳菊おばさん」という単語がとてもお気に入りなので、上に書いたような人物なんですがおいらはそう書きます。これは本当にごめんなさい。
でも、さすがにこの動画での扱われ方に比べたら、「陳菊おばさん」っていう呼び方もかなりマシだと思うの。
これはひどい。
そんな陳菊おばさんは21日に北京入り、さっそく北京市長の郭金龍と会談したほか23日には上海の韓正市長とも会談の予定とのこと。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090522AT2M2103A21052009.html (日本経済新聞)
別にそれに合わせたわけじゃないと思うんだけど、同じ21日に中国外交部の馬朝旭報道官による定例記者会見でこんなやりとりがありました。
記者:馬英九が来週中米を歴訪をしようとしており、その際にアメリカも「通過する」。現在、両岸関係には改善が見られているが、大陸としてはこの馬英九のアメリカ「通過」に対して反対の態度を堅持するか?
答:重ねて申し上げたいと思うが、中国政府は一貫して一つの中国の原則を堅持しており、いかなる国家であっても台湾と政府間の往来を行うことに反対する。この立場には何の変化もない。
2009年5月21日外交部発言人馬朝旭による定例記者会見 (中華人民共和国外交部)
26日からの馬英九総統の中米訪問に関する質問ですね。両岸関係がいくら好転しようとも「一つの中国」という原則は変わらないし、台湾という(または中華民国という)国が他の国と関係を持つことは認めないっていうことです。もっとも大陸側のこういうスタンスなんて胡六点を出すまでもなく明らかなことだし、「一中各表」などという甘い言葉をいいことにここまで来てしまっているのが台湾側なんだけどね。
いわんや、今回の高雄市長の北京訪問なんていうのも、大陸側からしてみれば胡六点で「民進党が台湾独立という立場を変えれば、大陸は正面からこれに応えたい」と言った手前、「民進党籍の市長が恭順の意を示した」という構図がベスト、そんなことありえないのでせめて「中華民族がともに大会を成功させる」というなんとなく平和な構図がベター、さもなくば「台湾省の一介の市長が上京してきた」くらいにしないとまずいんです。陳菊おばさんが「こんどうちの国でこういうのやるから来とく?」とか言った瞬間に馬涙目、江涙目。
ちなみにこれに関する共同の記事で、
> ただ対中強硬路線を取った前総統の陳水扁氏の訪米時には
> 「中国への甚だしい内政干渉だ」などと強い不満を表明、米国を批判した姿勢とは一転させ、
> 対中関係改善を進める馬政権に配慮した。
【中国】「台湾総統の訪米」には反対だが、批判はせず-中国外務省報道官[05/21]
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1242902954/
ってあるので、あれ?前回はどうだったっけ?って思ったので調べてみると、昨年8月の馬英九中南米初外遊の際の劉建超報道官の回答はこんな感じ。
台湾海峡情勢にどんな変化があろうとも、一つの中国という原則は変わることはない。中国は一貫してアメリカと台湾当局とがいかなる形式であっても政府間の往来を行うことに反対している。我々は、アメリカが一つの中国政策を堅持し、米中三共同コミュニケの約束を遵守することを適切に実行し、慎重かつ適切にこの問題についてあたることを願っている。
2008年7月15日外交部発言人劉建超による定例記者会見 (中華人民共和国外交部)
さらに、2007年に当時の呂秀蓮副総統が同じようにアメリカを通過した際には、
中国は、アメリカと台湾当局がいかなる形であっても政府間の往来を行うことに断固として反対する。この立場は一貫し、かつ明確である。我々はこれについて既に厳正な交渉をアメリカに提示し、アメリカが一つの中国政策を厳守し、米中三共同コミュニケと「台湾独立」への反対の約束を遵守するよう要求した。
また、いかなる名目や口実であっても呂秀蓮がアメリカにおいて中国の分裂に関わる活動をすることを認めないこと、「台湾独立」勢力に向けていかなる誤ったシグナルも発しないことを求め、現実的な行動によって台湾海峡情勢の安定と米中関係の大局を維持するよう求めた。2007年7月5日外交部発言人秦剛による定例記者会見 (中華人民共和国外交部)
あ。だいたいあってる。っていうか、わかりやすいなあ。
脱線したので再び陳菊おばさん。というわけで、陳菊おばさんがどういうスタンスで大陸の要人と会うかが注目となりました。で、それを伝えた産経の記事で立ったのがこれ。
【中台】台湾・民進党幹部に異例の待遇 中国、穏健派取り込みか[05/22]
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1242997123/
今回、陳菊氏が中国訪問を決断したのは中国から観光客や投資を呼び、来年の高雄市長選で再選を果たしたいとの思惑があるためとされている。中国側もこれを理解し、政治的な話題に一切触れないうえ、メディアなどを使って高雄市を宣伝。「訪中大成功」を演出しようとしている。
台湾・民進党幹部に異例の待遇 中国、穏健派取り込みか (産経新聞)
そうだったのかー。と棒読み。
確かに報道を見ていても、郭金龍を開会式に誘い、郭金龍が「チャンスがあれば」と答えたのに対し「嬉しいことです」と返したりだとか(これは流石に社交辞令も大きいけれど)、北京市民の高雄訪問を歓迎し「身の安全は私が守ります」と発言したりだとかしてます。
じゃあ、陳菊おばさんが例えば江丙坤のような国民党サイドの人間のような話しかしなかったのかと言うとちょっと違う。ホスト都市の市長としての発言に終始しつつ、それでいて発言のそこかしこで国境を引いていました。いや、この産経の記事だけ読むとかなり厳しいんですけど。
http://www.udn.com/2009/5/22/NEWS/NATIONAL/NATS2/4919860.shtml (聯合報)
というのも、22日の台湾紙を賑わせたのが、陳菊おばさんの郭金龍との会談時に出たこんな発言。
「今年は高雄だけではなく台湾のほぼ全土でマイナス成長となり、まさにその真っ只中にいます。中央政府の我らが馬英九総統は、『我々台湾は台湾経済を改善しなければならない』という非常に大きなプレッシャーを受けている」
北京市長と会談 陳菊「馬総統、中央政府」と発言 (TVBS)
と、北京政府と異なる政府が台湾には存在し、その政府は台湾の経済回復に向けて頑張らないといけない状態だと言ってしまいました。あ、でもこれは馬涙目。
さらに続けて陳菊おばさんは大陸を指して「中国」「中国」と連呼。台湾は大陸とは異なる国なんです、いわゆる「中国」っていうのとは異なる国なんですということを巧みに表現しちゃいました。あ、郭涙目。え、いちおう郭金龍って中国共産党中央委員なんすけど。
「これまでのところ、中国代表団を含む100以上の国と、200あまりの都市が我々高雄を訪れてワールドゲームズに参加する」
北京市長と会談 陳菊「馬総統、中央政府」と発言 (TVBS)
このほかの媒体でもこんな感じ。
http://www.udn.com/2009/5/22/NEWS/NATIONAL/NATS2/4919844.shtml (聯合報)
http://news.ftv.com.tw/Read.aspx?type=Class&sno=2009522P08M1 (民視)
この発言、藍緑問わず比較的好意的に受け止められています。特に緑サイドからは訪中そのものに対して批判的な声もあったんですが、
しかし、陳菊と北京市長の会話の内容が伝わると、多くの緑系網友たちは「陳菊は藍陣営に比べてガッツがある」という賞賛の評価に変わった。藍陣営は中国であえて「一中」だけを話すが、陳菊は「各表」を行い、両岸それぞれにそれぞれの中央政府があることを示したのだ。
主権を宣言 陳菊訪中で「我々の馬総統は...」 (自由時報)
とのこと。
民進党の立法委員からは「どんな場所にも台湾の主権を確立する民進党の勇気を体現した(潘孟安)」「国民党の男たちはあんなにたくさんの人数で中国大陸に行っているのに、我々民進党の女性一人に誰も及びもしない。陳菊のようにはっきりと中共北京の者の面前で『馬英九総統』などといえる人なんていない(張花冠)」との声が上がり、これにはさすがに気まずい国民党。呉敦義副主席は「もっと地位の高い人物の前でも馬総統と言っている」と言っているけど、TVBSによれば江丙坤海基会董事長は「『馬先生』を特に強調」し、呉伯雄国民党主席は「馬英九『先生』」、馬英九総統自身も陳雲林海協会会長が来た際、「馬『先生』」だったとか。ダメじゃん。
http://www.tvbs.com.tw/news/news_list.asp?no=arieslu20090522123028 (TVBS)
おいらも別に訪中そのものには反対しません。そして陳菊おばさんのスタンスを素直に「おお」と思います。中国とのつきあいを完全に遮断するというのは非現実的だし、それならば国と国としての関係にどうやってもっていけるかだと思ってます(その上で傾中かどうかっていうのは別問題として残るけど)。その意味で、陳菊おばさんは(本来それが目的ではないので)間接的な手法でもそれができることを示したし、何より党対党という藍陣営のやり方ではなく国民と国民というやり方を通したところがいちばん大きいんじゃないかな。
一方で、民進党の鄭文燦も言っているとおり、今回の陳菊おばさんの立場はあくまで「ワールドゲームズという国際大会を行う都市の市長」です。確かに産経の記事が言うような危惧もわかるんだけど、陳菊おばさんの立ち位置や中国側の出方といったものが通常とは異なることは、やっぱり考慮しないとダメだと思うなあ。
また、一部で報道されているように、民進党内における中国に対するスタンスの転換点になるかも、というのもありえなくはないなと思ってます。ただし、それは決して胡錦濤や産経の変な記事の望むような方向に向かうとは到底思えないっすけど。
http://news.chinatimes.com/2007Cti/2007Cti-News/2007Cti-News-Content/0,4521,50101154+132009052200832,00.html (中国時報)
http://news.chinatimes.com/2007Cti/2007Cti-News/2007Cti-News-Content/0,4521,50101154+132009052201018,00.html (中国時報)
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