控え目すぎて何が何やら。

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既に山ほど報道がなされているとおり、今日6月4日は1989年の天安門事件から20年にあたります。
特にアメリカはクリントン国務長官が声明を発表し、事件の再調査や服役されたままの関係者の釈放を求めるなど、中国の人権問題をチクチク突いています。おお、先月のペロシ下院議長訪中とはちょっと違った展開の予感。
 【米中】クリントン米国務長官の天安門事件調査要求に、中国外務省の秦剛副報道局長「粗暴な内政干渉で断固反対する」[06/04]
 http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1244113416/

さて一方日本はと言えば、3日に行われた外務省兒玉報道官の会見での発言はこんな感じ。

我が国としては、中国においても(中略)人権及び基本的自由が保障されることが重要であると考えています。中国の人権状況については、(中略)人権の促進にも一定の努力を払ってきています。しかし、引き続き懸念材料はあるものと認識しています。
日本政府としては昨年5月の胡錦涛国家主席の訪日の際の「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明が発出されましたが、その中で(中略)合意していることも踏まえて、今後とも中国との対話の機会を通じて、中国の前向きな動きを促していく方針です。
以上が、天安門事件20周年を前に日本政府のコメントです。

報道官会見記録(平成21年6月3日) (外務省)


微妙に煮えきりません。もっとも、過去数年の例を見てもこうした記者とのやり取りが残っていないところを見ると、節目の年とはいえこうしたコメントが出たことは意味があるかもしれません。っていうか人権派のマスコミはこれまで聞かなかったのかよ。
まあ、質問が出て回答もしているのにWebではカットされる中国外交部も露骨だと思うけどね。
【中国】天安門事件20周年控え、外交部報道官に事件に関する質問相次ぐ[06/03]
 http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1244033426/
 http://www.fmprc.gov.cn/chn/pds/wjdt/fyrbt/t566137.htm (中華人民共和国外交部)

さてさて、台湾ではどうだったのでしょうか。香港では曽蔭権行政長官の発言や20周年ということもあって「平反六四」の機運が高まる中、総統就任前は台北市長在任中も含めて18年連続で記念行事に参加していた馬英九総統が、5月下旬に行事への不参加を表明しました。ダライ・ラマに続き民主化活動家の王丹との会談をやんわりと断ったことと合わせ、これには批判が集まっていたところです。
 【中国】天安門事件当時の学生リーダー、中国の民主化に対して「日本の熱意は十分とは言えない」[05/22]
 http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1243000144/
 【香港】世論調査で「天安門事件被害者に名誉回復を」への支持が97年以来最高の61.2%に[05/29]
 http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1243621118/
 【香港】天安門事件20年を前に抗議デモ、中国当局に再評価求める[05/31]
 http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1243769100/

その代わりと言ってはなんだけど、昨年に続いて総統府から談話が発表されました。せっかくなので一昨年、つまり陳水扁前総統が最後の年にメルマガで発表した内容と比べてみましょ。
2007年、陳水扁は「阿扁総統電子報」の中で天安門事件18周年に関する談話を発表し、天安門事件から変わらない中国の体質として「一党専制の独裁政治」「民主化への弾圧」を挙げ批判しました。また、経済成長率を超えるペースで膨張し続けている軍事費についても触れ、そうした力を平和に使うべきだとし、民主主義の導入こそが将来の財産になると述べるなど、「未だ民主化されず」という点を非難しました。
 【中台】台湾の陳水扁・総統、天安門事件18周年で談話、中国政府の民主主義弾圧を批判[06/01]
 http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1180698308/

翌2008年は、その「民主化への弾圧」をまさに形にしたものとして、その2ヶ月ほど前にはチベット騒乱が起きています。それを踏まえた上で新総統たる馬英九の行動に焦点が集まったのですが、発表された談話に対する評価は緑系を中心にイマイチなもの。中国の改革開放路線に一定の評価をする一方で、「平反六四」や「チベット騒乱」には触れなかったことが原因でした。
 【中台】馬英九総統が天安門事件19周年に際しメッセージ 中国の改革開放を評価する内容に民進党から批判も[06/05]
 http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1212682752/

さてさて、いつものことながら前置きが長くなったところで今日総統府が発表した「六四事件」20周年談話の全訳です。お約束だけど誤訳あったらごめんなsorry、でも謝罪はするけど賠償h(ry

馬英九総統は今日、「六四事件」20周年に際し談話を発表した。全文の内容は以下の通り。

20年前の今日、北京の天安門広場で世界を震撼させる「六四事件」が発生しました。
今年、世界各地の華人社会ではさまざまな記念活動が行われています。私たちは、この歴史の傷跡には勇気を持って直面すべきであり、どうにか逃げようとすることはできないと考えます。

政府と国民との間の流血衝突は、過去の歴史で内外問わず絶えたことはありません。過去半世紀を見ても、アメリカ、東欧、韓国、東南アジアなどで発生し、社会に長く残る爪あとを残しています。政府は国民のために存在するのだから、時間とともに消えることのない流血の衝突によって作られた恨みや恐怖に対しては、権力を握る政府が、謙虚に見つめなおし傷を癒す方法を考える責任を永遠に有するのです。
私たちは、いかなる政府も、不幸な歴史に直面し「事実そのものについて論じる」必要があり、沈痛な家族に対しては「人の身になって考える」必要があると考えます。そのことだけが、さらなる悲劇の発生を防ぐことになるのです。

台湾もかつて同様に、容易に取り払うことのできない歴史の傷跡を経験しました。民国36年(1947年)の二二八事件や民国40年代(1950年代)の白色テロの時代には、多くの人が無実の罪で命を落とし、多くの人が自由と健康を奪われ、多くの家庭がバラバラになり、一家が離散して辛い生涯を送ることになりました。また、国民と政府との関係にも恨みと恐怖の暗い影が付きまとうこととなりました。
民国76年(1987年)に戒厳解除となると、政府は非常に長い時間をかけてとても大きな決断と誠意を示しました。調査を行い、過ちを認め、謝罪し、記念碑を建て、補償のための法律を作り、名誉回復を行い、国定記念日を設けて半旗を掲げるなど一連の行いを通じ、歴史の傷が癒えるよう望み、社会的な和解を促進しました。
こうした努力の実践は、正義と人権法治の歴史に転化し、台湾にとって中華民族にとって、あるいはその他の国家にとっても対面する意義と参考にする価値があります。

「六四」後の20年間には、台湾海峡両岸においても大きな変化が生まれました。大陸は経済改革に成功し人々の生活は大幅に改善されました。最近10年間を見ると、大陸当局は以前に比べて人権問題にさらなる注意を払い、1966年に国連で採択された「国際人権規約」も批准したほか、何度も「人権白書」を発行し、今年4月には「国家人権行動計画」を正式に発表しています。
これらに対する国際社会の評価はまちまちですが、これらの行動からは、大陸当局がこの問題に直接向き合う意思があることを読み取ることができ、過去と全く違う公開するさまと自信を示しています。

過去20年の間、台湾も民主化の歴史的過程を経てきました。戒厳解除の後、結党解禁、国会改選、動員戡乱時期の終止と臨時条款の廃止、省市長の民選から総統の直接選挙など、台湾は一歩一歩民主的な憲政状態に戻っていきました。
国民は自らの選挙によって過去8年に2回の政権交代を行い、台湾はだんだんと成熟した民主主義社会に向けて歩みを進めました。先月、台湾もまた国際人権規約を批准し、これを国内法に転化すべく、今後2年間のうちに、関係する国内法の徹底的な検討を行って、国際的な人権のレベルに合わせようとしています。

この一年来、両岸関係の改善が始まり、双方の敵意は次第に低下し、経済貿易の往来や文化交流は日増しに密接になっています。
両岸は60年間の軍事衝突と政治的対立を経て、期せずして具体的な行動の開始で一致しました。
人権問題に関しても、とりわけ安心をもたらしています。この良好な発展は、歴史的な偶然や幸運とするべきではなく、決して戻ることのない傾向とすべきであり、それこそが両岸の人々に幸せをもたらすでしょう。

私たちは、過去の歴史が私たちを未来に導く明かりとなると考えます。刻まれた歴史の教訓は、憎しみを増すためではなく、未来を励ますものです。今の両岸関係の緩和は、やがて台湾海峡の平和に夜明けをもたらすでしょう。私たちは、軍事的な競争や外交的な争いを最もすべきではないことだと考えています。
両岸で最も必要とされているのは、法治と人権について互いに競い合って高めることであり、これら世界的に普遍的な価値を両岸の人々の永遠なる共通言語とし、中華民族の次世代のために自由で民主的な未来を作るべきなのです。これは私たちの「六四」20周年に対するメッセージであり、両岸の未来の平和的発展に対する希望でもあるのです!

総統「六四事件」20周年談話を発表 (中華民国総統府)


む、無駄に長いっす。全体的にオブラートに包んだような言い回しで、極めて控えた内容と言わざるをえないっす。
日本国内のメディアを見ても、「中台の経済交流拡大を最優先して中国を刺激する言動を努めて控え(産経)」や「昨年に続いて中国に配慮する内容となった(毎日)」など、否定的な見方が並んでますね。
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/090604/chn0906042022014-n1.htm (産経新聞)
 http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20090605k0000m030040000c.html (毎日新聞)

台湾のメディアを見ても、自由時報は「再評価を求めず、改革解放を賞賛」と見出しからして非難の論調。鄒景雯の署名入り記事でもいわゆる「変節」について厳しく指摘してますね。おいらが「あ」と思ったのは、馬英九が天安門事件を「政府による市民の反発への弾圧」ではなく「政府と国民との間の流血衝突」としたことに対し「最大の後退だ」と指摘したことでした。また社論でも、中国の人権規約批准を評価したことについて「笑止千万だ」とした上で、「どこの国家で、今日び人権や自由の保障を謳わない憲法があるんだよ」と、中国の主張に譲歩しすぎる様をフルボッコしています。
一方、聯合晩報は社論で、「今の中国は当時の中国ではない。中共もまた当時の中共ではない」とし、「事実を整理し、六四に対する評価の結論が出るのを待とうではないか」というような展開。さすが聯合報。でも北京は再評価も再検証もしないって言ってるよ。
 http://www.libertytimes.com.tw/2009/new/jun/4/today-t1.htm (自由時報)
 http://www.libertytimes.com.tw/2009/new/jun/4/today-fo3.htm (自由時報)
 http://www.libertytimes.com.tw/2009/new/jun/4/today-s1.htm (自由時報)
 http://www.udn.com/2009/6/4/NEWS/MAINLAND/MAI1/4943373.shtml (聯合報)
 http://www.udn.com/2009/6/4/NEWS/OPINION/OPI1/4943359.shtml (聯合報)
 http://news.chinatimes.com/2007Cti/2007Cti-News/2007Cti-News-Content/0,4521,5050638+112009060400131,00.html (中国時報)
 http://news.chinatimes.com/2007Cti/2007Cti-News/2007Cti-News-Content/0,4521,5050638+112009060400132,00.html (中国時報)

とはいえ、「歴史の傷跡には勇気を持って直面すべき」や「(台湾の行った民主化は)対面する意義と参考にする価値がある」など、「平反六四」に向けた婉曲な表現も見られ、過去の国民党の行状を天安門事件のそれと重ねるところなども含めて(お前が言うな、っていうのは言われ続けることだろうけど)、頑張って評価すれば「意外に頑張ったかも」という感じ。
ただ、その後に続く中国の人権問題に対する姿勢への評価あたりまでは、この際「まあ馬フィルターかかってるからね」と大目に見るとして(ダメだけど)、そこからなんで両岸関係に話が飛んで、両岸関係の良好な発展が「両岸の人々に幸せをもたらすでしょう」だなんてお花畑に突入しなきゃいけないのかしらん。馬鹿なの?死ぬの?
せめて、あえて両岸関係に触れるのであれば、軍事的な緊張、特にミサイル配備などの撤去を求めるべきだし、「まずそこから範を示せ」くらいは言ってもいいと思うんだけどなあ。ちょうどいいタイミングだし「台湾は民主化した。お前らはどうする?」くらいは突っかけてもいいはずなのにね。両岸関係の結論ありきで書いているような感があるから、メインのはずの天安門事件についてどうしても薄味になっちゃってる印象は拭えません。いや、そうしたいんだろうけどさ。この中途半端なメッセージでは、「世界を敵に回しても」的な危うい伝わり方をしかねないよね。っていうか、する。あ、そのつもりなんですね、わかります。
台湾にしてみれば、本来ならば「他国で20年前に起きた痛ましい事件」なのです。けども、自由広場で座り込みを行ったり、各種の行事を行ったりしてきたのは、中共に対する「物申す」強いメッセージがあったからです。だけど、こうなってくるとなんかかえって何をしたかったのかよくわかんないっす。日本の外務省のように形式ばったコメントは許されないのだとしたら、むしろ何もしない方がよかったんじゃないのかなあ、とさえ思っちゃう。

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このページは、◆YAUCHInowAが2009年6月 4日 23:25に書いたブログ記事です。

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