大前さんの発言は、外交センスに欠ける。

| | コメント(3) | トラックバック(0) | | このエントリーをはてなブックマークに追加 |
前回の「そのうち大前さんが国共論壇に呼ばれそうな気がしてきた。」に続いてオーマイ研一。うん、そうなんだ。タイトルは、オーマイのブログ「大前研一「ニュースの視点」」のうち、7月17日の日付でアップされた「日本の外交センスが招いた混乱~北方領土返還交渉から考える」という記事の章タイトル「斉藤代表の発言は、外交センスに欠ける」をそのまんまお返しする形にしています。っていうかね、センスに欠けるどころか皆無と言ったっていいくらいですよ。

この記事、おいらもいい加減お終いにしたい齋藤正樹・日本交流協会台北事務所代表の台湾地位未定論についてのお話。多少の戯言なら別にスルーしていたかもしれないんですが、あまりにひどい内容な上に、輪をかけて「外交センスに欠ける」などと言ってのけるのは中途半端なギャグよりも始末が悪いのです。
記事によればオーマイが知ったのは「もはや芸術的とも言える再着火。」で取り上げた朝日のビューティフルな釣り記事。やったね、朝日さん。オーマイが釣れたよ!

またこの外交におけるセンスと言う点では、先日の朝日新聞(7月5日付)で報道されていたニュースにも目が止まりました。残念ながら良い意味ではなく、「日本政府の外交音痴を物語るニュース」として、私は注目しました。

日本の外交センスが招いた混乱~北方領土返還交渉から考える (大前研一「ニュースの視点」)


さて、オーマイは滑り出しから歴史的事実についてどうやら壮絶な勘違いをなさっているもより。

サンフランシスコ平和条約が締結された時代には、中国大陸では、蒋介石の中華民国(国民党)と、毛沢東の中華人民共和国(共産党)の間で激しい内戦が生じ、結果として、共産党が中国大陸を征服し、国民党を台湾に追い込んだ形になって、双方が両岸で対峙する状況になっていました。
ただ、外交のプロセスとしては、当時のサンフランシスコ平和条約の当事者は国民党だったと言えると思います。
これは「戦争の当事者」という意味からも説得力があるでしょう。その国民党が今は台湾にいるわけですから、すでに国際的には「決着」しているというのが常識です。
それをこの期に及んで「帰属が未確定」などと発言するのは、「今の台湾政府は台湾に逃げ込んだ亜流の政党であり、違法政府だ」と指摘しているも同然です。斎藤氏の発言の意図がわかりません。

日本の外交センスが招いた混乱~北方領土返還交渉から考える (大前研一「ニュースの視点」)


言うまでもない事実として、1951年に締結されたサンフランシスコ平和条約では中華民国も中華人民共和国も締結国には含まれていません。その理由こそ、条約を締結すべき「戦争の当事者」がどちらなのか、つまり中国を代表する政府がどちらなのかが決められなかったからです。従って、サンフランシスコ平和条約で両国とも締結されていない以上、それに推論を上塗りして持ち出してきても後の文に何もつながらないので、何が決着しているとオーマイが考えているのかさっぱりわからないのです。
まして、そのサンフランシスコ平和条約というものは、第2条(b)で「日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」と放棄のみが謳われているように、それそのものが台湾地位未定論の論拠になっているのです。決まってない根拠を持ち出して何を言いたかったのだろう。
また、「今の台湾の政府が違法政府だと指摘しているも同然」だとご立腹だけど、1952年に締結された日華平和条約でも、領土の主権そのものはサンフランシスコ平和条約に則り「日本は放棄した」で留めた上で結ばれています。未定論を展開することと中華民国政府が台湾を施政下に置くことを承認しないことは必ずしも一致しません。この2点から言っても、台湾地位未定論の論拠となるサンフランシスコ平和条約と日華平和条約の2つの条約をオーマイがさっぱり読んでいない、さもなくば読んだけどさっぱりわかっていないとしか思えません。
いや、おいらもですね、一万歩と二千歩くらい譲って「『日本は台湾を放棄した』のであって、放棄した後に主権の所在が定まったか定まっていないかまで踏み込むのは勇み足だ」っていう主張ならわからなくもないんですよ。ところがオーマイはそういう条約を中途半端に持ち出した上で中身をシカトなさり、戦後これまで中華民国が治めてきたことをもって中華民国の領土だと主張する。どうせなら「細けぇこたぁいいんだよ」と条約解釈をすっ飛ばして、「行間読めば中華民国のものだろうが」と言えばいいのに。どっかにいたけど、そんな人。

斎藤氏が個人的にどのような歴史認識を持つかは自由ですが、交流協会の代表という立場にある間は心の中に留めておくべきです。
台湾は「世界で最も"親日"的な国」の1つです。なぜそのような国に対して、自らの立場もわきまえずに歴史を引っ掻き回すようなことをするのか、理解に苦しみます。
相手の国の歴史や事情を理解し、デリケートな問題には細心の注意を払う努力が求められます。

日本の外交センスが招いた混乱~北方領土返還交渉から考える (大前研一「ニュースの視点」)


ことこれに関しては「歴史認識」なんていうものじゃないです。「条約の解釈」です。オーマイは馬英九の日華平和条約解釈には1ミリも触れていませんが、既に終止(日本の都合でだけどね)した条約とはいえ一方の締結国がハチャメチャな解釈をした時に、もう一方の締結国が「ちょっと待った」とするのは間違っているとは思いません(上の「勇み足」という指摘はあってもいいけど)。オーマイは新聞記事だけ読んでブチ切れるだけじゃなくて、まず相手の国との歴史や発言に至った事情を理解し、細心の注意を払って文章を練る努力が求められていると思うよ。
今回の場合、事の発端となったのは日華平和条約というちょいマイナーな条約の解釈についてなのですが、仮に中国が「日本は、日中共同声明により『台湾は中国の一体不可分の領土である』と認めている」と解釈を垂れてきた場合、これに反論することは「歴史を引っ掻き回すようなこと」や「外交センスに欠ける」なんて言えるのかいね。それに、こればかりは親日であるかどうかというのは何のモノサシにもなりゃしません。っていうか、それによって反応を変えることが求められるものなのかな、外交って。おいらが甘ちゃんなだけなのかな。
オーマイは最後の一文で、

斎藤氏自身も、そして彼を登用した日本政府も、しっかりと問題を受け止めていただきたいと思います。

日本の外交センスが招いた混乱~北方領土返還交渉から考える (大前研一「ニュースの視点」)


と厳しい注文をつけていますが、これ、そっくりそのままお返ししますよ。「大前氏自身も、そして彼を重宝する馬英九政権も、しっかりと問題を受け止めていただきたいと思います」。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 大前さんの発言は、外交センスに欠ける。

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.yauchi.net/mt/mt-tb.cgi/174

コメント(3)

Anonymous :

これだけはっきりした勘違いを指摘するならオーマイなどとふざけずやって欲しいな!

雨彦 :

まりちゃん、こんばんは^ω^/

大前研一って国際政治通で世界の事情に通じている事になっているけど、意外と無知なんだねぇ…私も人の事は言えないけど(汗)

今回のまりちゃんの記事は読んでいて痛快だったよ!大前に読ませてやりたいね>∀<

まりちゃんの外交の考え方は正しいよ、政治家共の中にも、まりちゃんくらいに確りした考えの人がいれば我が国も外交音痴なんて言われずに済むのにね(-_-;

最近は疲れが抜けないよ、まりちゃんは疲れ溜まってるかな?

お互いに休める時はゆっくり休もうね、お休み~♪

◆YAUCHInowA Author Profile Page:

> 名無しさん。
基本、チキンですから。無理なんですっ!(ここだけ堂々と)

> 雨彦さん。
おいらもかなり適当なので、間違ってることもしばしばなんですけどね。いや、バシバシかもしれません。あはは。

暑いのだか暑くないのかよくわかんない日が続きますね。雨彦さんもお大事に。

コメントする

このブログ記事について

このページは、◆YAUCHInowAが2009年7月27日 18:32に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「そのうち大前さんが国共論壇に呼ばれそうな気がしてきた。」です。

次のブログ記事は「「けいおん!」の原作マンガ第2巻が台湾で8月12日に発売になるらしい。」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

動画とか。

 

・備忘録。
http://www.angusj.com/resourcehacker/rh_japanese.zip
O→F→object TitleEdit: TEdit→MaxLength


Powered by Movable Type 4.25