とりあえず、おいらが聡明じゃないのは確かだ。

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明らかに賞味期限が切れているニュースなのですが、先々週の週末にちょっとした騒ぎになったお話でも。今回の中心は、日本ではなかなか馴染みのない台湾の監察院、そこの院長を務めている王建[火宣]です。名前の二文字目は環境によっては表示できない悩ましい字なのです。人物紹介をするエネルギーがないので、Wikipediaでも見てください。ってひでえ。
その騒動は、この王監察院長が8日に出席した原住民族の人権問題に関する検討会での一言が発端でした。まずは8日の検討会についてのニュースを中央通訊社から全文引っ張ってみますか。

王建[火宣]・監察院長は8日に行われた検討会の中で、政府の原住民人権問題への対応について、どういった分野で不十分なのか、出席した学者や専門家に提起を依頼した。監察院では是正権や弾劾権を使い、行政部門にこれらを重視させることができる。

監察院は8日、「第3回人権保障業務検討会」を開催し、学者や専門家らを招いて「原住民族の教育的権利の保障に関する問題と対策」や「原住民族の経済的権利の保障に関する問題と対策」について議論を行った。王監察院長は午前、挨拶の際に先のように述べた。
王監察院長は、「原住民族は50万人しかいないが、これまでずっと弱い地位にあり、平均的な教育水準は初級中学(中学校)卒業程度だ。原住民族の競争の対象はいつも外国人労働者だ。経済や生活など各方面で合理的な改善には至っていない」と述べた。
王監察院長は、猫が鼠を捕らえることを喩えに用いて、これまで政府の原住民政策が問題の難点と根源を捕らえてこなかったと説明した。「数十年来、我々は絶えず猫がどんなに丈夫かを強調してきたが、一貫して鼠を捕らえてこなかった。これは恐らく皆さんに考えてもらわねばならない」。さらに王院長は、「猫」は原住民を指すのではなく、政府の仕組みであると説明した。
さらに出席者に対しても、原住民の人権という面において、どんな政府機関が理想に足りない行いをしてきたか、皆さんで活発に提起するよう求め、監察院はその是正権や弾劾権を持いて行政部門にこれを重視させると述べた。

これらの発言は、出席していた呉清基・教育部長、孫大川・原住民族委員会主任委員を気まずくさせた。孫大川・原民会主任委員は、王監察院長の「猫が鼠を捕らえる」論に同意を示した。孫主任委員は、「原住民族の問題は根っこの部分が上手く押さえられていない。漢人の思考を常用し、原住民に自らを変えさせることが大きな失敗の事情になっている」と述べた。
王監察院長は、「ミン南、客家、外省人は皆原住民ではない。原住民だけが元々ここに住んでいた人だった」と述べ、「いい意味に聞こえない言い方だが、この宝島は彼らのものだ」と語った。
さらに、「漢人が来た後、漢人が非常に聡明で人数も多かったことから、原住民は弱い立場に置かれてしまった。漢人として充分に考えるべきことであり、権力を預かっている以上、着実に原住民のためにことを為し、原住民が絶対に厄介ごとではないよう助ける」と示し、「族群の衝突を絶対に起こしてはならない」と語った。

原住民の人権を重視 王監察院長:是正・弾劾権を使う (中央通信社/強調は引用者)


この太字部分の発言が突っ込まれました。折りしもこの直前には馬英九総統を「非常に優秀だ」と評価して緑系から叩かれていたこともあって、翌9日の自由時報は「また失言」という見出しを掲げます。

王建[火宣]・監察院長がまた失言!王監察院長は8日、監察院人権保障業務検討会で、漢人は聡明で人口も多かったので原住民は弱者層に置かれた、漢人はよく考えるべきだと指摘した。

同じく検討会に出席していた孫大川・原住民族委員会主任委員は、取材に対して「喩えは皆に想像を促すものだった」と落ち着かせるように話し、「王院長の指す『聡明』とは『器用だ』ということだろう。原住民は漢人と接触する過程において、多くのことが何もわからないもので、漢人ほど多くを考えなかった。そのため、上の世代の人たちはしばしば漢人はとても器用だと言うのだ」と語った。

また失言 王監察院長:漢人は原住民より聡明 (自由時報)


この孫大川・主任委員はプユマ族の人なんですが、自由時報なんか見ているととばっちりを食らっている印象すらあって、なんというか...ね。ちょうど9日に立法委員選挙の補選が重なったこともあり、このニュースでのスレ立てはできませんでした。でも、Twitterでちょっと話していたのは、仮に立てていたとしたらどういう展開になったかは火を見るより明らかっていうこと。王院長が国民党→新党という経歴の持ち主の外省人であることも考えたら、お約束の「これだから外省人は」というフレーズが2つか3つ飛んで10レスでdat落ちだね。って、落ちるの早いなあ。
確かに上の太字の部分だけ見ると「なんという上から目線」って思っちゃいかねません。いや、特にこの人の場合そういう要素が絶対に無いとまでは言いきれないっすけど。でも、孫・主任委員の言うように原住民族と漢人との邂逅の頃を考えると、決しておかしな話ではないでしょ。逆に無理に今の断面の話にスライドさせるとおかしなことになる。珍しく自由時報読んでて「あれ?」って思ったもん。あでも、この人の場合今の断面でそう思っていないとは言いきれないっすけど。
だって、それまでの成熟度が異なる二つの文化がぶつかった時に、力の面で一方が勝るのはよくあることだもの。むしろその時点での優劣を論評するんじゃなくて、その後の原住民族政策が問題となるべきでしょ。だから、その差を埋めるようなことしてこなかった、というか誤った埋め方をしてきたと指摘した王院長の発言は、(それってお前ら国民党の政策もあるだろっていうのはあるけど)入口の議論としては決して非難されるべきものじゃないと思うんだけどね。
さらに、ことは単純に原住民族か否かというシンプルな二元論にもなりえません。中国時報には原住民族の芸能人、宋少卿と李宣榕の話が載っていますが、このうち李宣榕は、

李宣榕はタイヤル族で台北医科大学を卒業している。彼女は王院長の発言を善意によるものだと支持し、この発言は芸能人のそれと同じように一部だけが切り取られて歪曲されていると語る。「原住民族が聡明でない最大の理由は、都市と農村の差が著しいことだ。子供に教育を受けさせるための充分多い資産を両親が持っておらず、学習の機会に影響を与えている。もし同じ天秤にかければ、漢人との違いは絶対にない。王院長の意図を私は理解できる」と語った。

宋少卿と李宣榕が声を揃える 原住民族のIQは漢人に負けていない (中国時報)


と語っています。「漢人は原住民より聡明」というワンフレーズだけで語るのは危ういよね、ってまとめると小さな話になっちゃうかな。でも、これってけっこう日本人にとっても耳の痛い話でもあります。例えばスレを立てなかったので仮定の話になっちゃいますが、それでもこの発言を「外省人がどうこう」と言う典型的な東亜+の人がいると思うんですよね。そういう人たちに尋ねてみたいのは、じゃあ日本が台湾を統治していた頃の理蕃政策はどう考えるのか、身近な例で言えばアイヌや琉球はどうなのかということ。それでも切り取って伝えられた王院長の発言を非難することができるのか、というか切り取られる前の発言であればなおのことできるのか、小一時間ほど問い詰めたい。
と思ったけど、小一時間はさすがにめんどいし浅学なおいらにはその資格がないので無理ぽ。

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