反対派どころか『反対派などいない!』という応答すら「存在しない」ことに。
よくよく考えてみれば、あの北京五輪からも2年、正確に言えば1年半もたつんですね。そんな北京五輪に沸いた2008年の暮れ、いわゆる「08憲章」が発表されました。その起草者の一人である劉暁波に先日、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の刑言い渡されたところです。
これについては日本でもそこそこ報道されていますが、今日のお話はその後の出来事について。判決が出た11日は、折りしも春節前最後の外交部報道官定例記者会見の日(もっとも、オバマ・ダライ=ラマ会談を受けて12日にも記者会見してますけど)。この話題についても記者から質問があったみたいだけど、そこでこんなやり取りがあったそうです。産経ソースで11日共同電から。
「中国にはディシデント(反対派)は存在しない」。中国外務省の馬朝旭報道局長は11日の定例会見で、中国共産党独裁体制の廃止などを呼び掛け、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受けた劉暁波氏らを指して外国記者が使った表現に「あなたの言葉は誤りだ」とかみついた。
局長は「中国は法治国家であり、犯罪か非犯罪かの区別があるだけだ」と強調。劉氏は反対派だから投獄されたのではなく、法に反したからだと言いたかったようだが、「反対派」存在の否定は、かえって党や政府の考え方しか認めない中国の独裁体質を印象付ける形となった。
別の記者がさらに「ディシデントは政府の政策に同意しない者の意味だが、中国にはいないのか」と追及すると、局長は「言葉の定義で議論したくないが、中国ではこの言葉の使用は適切でない」とかわした。(共同)「中国に反対派は存在しない」外務省報道官が記者の質問にかみつく (産経新聞・強調は引用者)
この概念の話に触れてしまうと、『ザ・ワールド・イズ・マイン』の「体制か、反体制かだ」という台詞を引っ張ってきたりしておいら自身が止まらなくなってしまうので、まずはどのような応答があったのかを見てみましょ。中国外交部のサイトから11日の定例記者会見を訳。長いので、今回の「反対派」とは関係ない話題は記者からの質問のみ訳します。
皆さんこんにちは。春節前最後の記者会見にお越しいただきありがとうございます。まず初めに、楊外交部長から皆さん宛ての挨拶をお伝えします。「皆さん、新年明けましておめでとうございます!」さて、慣例に倣い、春節の休暇期間は定例記者会見をお休みします。春節明け最初の記者会見は、2月23日(火)に行います。皆さんどうかご参加ください。
続けて一つお知らせがあります。中国政府の特使として文化部長の蔡部長が2月18日に行われるクロアチアのイボ・ヨシポビッチ新大統領の就任式典に出席します。
それでは、皆さん質問があればどうぞ。Q:オーストラリア政府は先日、中国政府が透明な方法により速やかにリオ・ティント社の事件を解決するよう求めている。中国政府はこれに対しどのように応えるか?また二つ目の質問ですが、イラン政府への新制裁実施について、中国政府はどのような状況になれば、フランスやアメリカなどの国に呼応し賛成するのか?
Q:報道によれば、アメリカ経済に回復の兆しが見えることから、FRBでは必要な際に「出口戦略」を実施することを考慮しているそうです。中国政府のこれに対する立場はいかがか?
Q:中国政府は、最近設立が決まった朝鮮半島事務特別代表にどのような考えをお持ちか?
Q:スリランカの最近の情勢と、反対派のリーダーが逮捕されたことについて関心をお持ちか?また、中国政府とスリランカ政府との間でこの件でやりとりは?
Q:報道によれば、アメリカの空母ニミッツが来週香港に寄航するそうだが事実か?
Q:北朝鮮の金桂冠・外務次官の訪中日程について回答可能か?また武大偉は今後も六者会談で中国代表団の団長を務めるのか?
Q:ミャンマー政府は先月、22人のウイグル族を送還したが、彼らはどのような理由で送還されたのか?また近況如何?
Q:リオ・ティント社の事件の具体的な進展をもう少し教えてほしい。この事件は公開審理がなされるか?オーストラリア政府の強い関心に対し何らかの回答はあるのか?
Q:先ほど、スリランカ情勢について「内政の話だ」と答えたが、近年ではEUやアメリカ、日本などの国もスリランカ情勢に関心を示している。また同時に、中国は港湾や空港の修繕などスリランカへの援助を増加させ続けている。中国政府として、この大幅な援助とスリランカの内政に対する不干渉との関係についてどのように説明するのか?
Q:EU各国は先日、ギリシャの債務危機に対する援助措置を呼びかけていたが、中国政府としてギリシャに対して救いの手を差し伸べるつもりはあるか?
Q:ある報道によれば、中国政府はイランに存する石油利益のため、制裁実施を望んでいないとされている。これに対する見解は?
Q:中国政府はかつていかなる企業も台湾に対して武器を売却することに反対していた。しかし台湾は先日ヨーロッパの企業から3機のEC225型ヘリを購入した。中国政府として、この企業に対する制裁の実施を考えているか?もし他に質問がないようであれば、同僚である秦剛と姜瑜を代表し、皆さんに新年の挨拶を伝えたい。皆さん寅年を迎えおめでとうございます。皆さんにとってよいことがありますように!来年も、我々の記者会見がスムーズに、かつ内容豊かに行われることを願っています。また、皆さんの仕事も順調に、取材で新たな進展が得られることを祈っています。
皆さんありがとう!ごきげんよう!2010年2月11日外交部発言人・馬朝旭による定例記者会見 (中華人民共和国外交部)
っておい、終わっちゃったよ!11日の朝日新聞の報道によれば、この会見では劉暁波の控訴審判決そのものについてもコメントがなされているはずなのですが、どうやらこの話題そのものについてカットされている模様。
(略)中国外務省の馬朝旭報道局長は同日の記者会見で「中国の内政と司法の独立に干渉すべきではない」と反発した。最高人民法院(最高裁)は9日、国家や政権に危害を及ぼす行為に対し、さらに厳罰で臨む方針を発表していた。今後、人権活動家に対する国家政権転覆罪による摘発がいっそう強まる可能性がある。(略)
「08憲章」起草者の実刑確定、二審も国家転覆行為認定 (朝日新聞)
試しに百度のニュース検索で、劉暁波をキーワードに検索してみたら「その検索結果は、関係法規や政策に合致しない内容に触れてしまっている恐れがあるので、見せることはできません」って怒られてしまいました。仕方ないね。
辛うじて簡体字メディアで報じているのはVOAとシンガポールの聯合早報ぐらいかな。聯合早報の記事によれば、この質問をした「外国記者」はVOAの記者だったみたい。なんていうか、あ、やっぱり。ということで12日北京電の聯合早報から抜粋して訳。ごめんね、香港紙はチェックしてないっす。
(略)中国外交部の馬朝旭発言人は11日の記者会見で「中国にはdissident(異なる政治的見解を持つ者や異なる意見を持つ者)は存在しない。我々は法に基づき物事を行うのみで、そこには犯罪者か犯罪者でないかの区別があるだけだ」と語った。
これについて、馬朝旭はVOAの記者の質問に答える際、以下のように解説した。
「dissidentの定義に関してだが、あなたの英語はきっと私よりも上手だろう。しかし私はこの定義についてあなたと議論をするつもりはない。あなたはきっとこの皆さんが同意するような定義を見つけ出すことはできないだろう。この類いの人物、あなたが言うようなこの類いの人物が中国に存在するかというと、あなた自身で判断するべきではないだろうか。しかし、私の理解において言えば、この言葉をこの場所で使うことは適当ではないと考える」(略)二審への上訴でも原審を維持 劉暁波に懲役11年 (聯合早報)
上手く定義をはぐらかしてますが、要は「反対派などいない!」という中の人理論ですし、「(反対派なんて)中国に誰もいませんよ」という、......ってごめんなさい、超脱線しました。もとい、考え方としては中の人理論なんでしょうね。傍から見るといかにも「そういう人がいる」んだけど、当人にしてみれば「その言葉は不適切だ。少なくとも俺にしてみればそんな人はいない」という。
いずれにしても驚きなのは、というよりも「ああやっぱりか」というのは、反対派の存在どころか、そういう応答があったことさえオフィシャルには存在を否定してしまうところ。それだけセンシティブな内容っていうことなんだろうけどね。それ以上に、この国はまだそんなことをやるのか、っていう虚無感にげんなりっす。
そういえば、上で書いた外交部の記者会見の記事では、トラの縫いぐるみを持った馬局長の写真もあるのですが、まあ「寅年を迎えるにあたってのちょっとした小ネタかな」と思いきや、このトラ、張子の虎どころかきちんと牙も持っていたようです。以下、当該記者会見を報じる11日の中国新聞網から抜粋で訳。
(略)記者からの10あまりの質問に答え終わり、記者会見がまもなく終わろうとしていた際、馬朝旭局長は寅年の吉兆のシンボルであるトラのおもちゃを取り出し、会場の内外の記者に早めの新年の挨拶を行った。
(略)会場の雰囲気はにわかに暖かく活気を帯びた。内外の記者たちは次々にカメラを持ち、発言台でトラを携えた馬局長を何度も何度も写真に収めた。
馬朝旭はユーモアを交え、来年は寅年であるから、記者会見場で質問する際には特に注意し、特に慎重であってほしいと語った。「さもなければ、『こいつ』はきっと答えないだろう」。馬朝旭は笑いながら手にした獰猛なトラを持ち上げてみせた。(略)外交部発言人、内外の記者に向けて「寅」年の挨拶(写真あり) (中国新聞・強調は引用者)
虎の尾を踏むことなかれ、ってとこですかね。おお、こわいこわい。
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「じゃあ虎の背に乗るしかない」と切り替えした人はいなかったかのう( ´・ω・)
> 名無しさん。
というか、乗らないと食べられちゃうので、言わずもがななんでしょうね。