2011年7月アーカイブ

「すげえ――正直、言葉にならない」
「語彙が足りないのね」
感動に水を差す毒舌だった。
しかし――その程度で。
彼女の吐く毒ですら、この空の下ではその程度で。
「あれがデネブ。アルタイル。ベガ。有名な、夏の大三角――ね。そこから横にすーっと逸れて、あの辺りがへびつかい座よ。だからへび座は、あの辺りに並んでいる星になるわね」
戦場ヶ原が、夜空を指をさして、滔々と説明する。

西尾維新「つばさキャット」『化物語』下,2006,p237


を、実際に七夕にやろうとしたら相手がいなかった皆さんと、相手がいなかったけど一人でやってしまった皆さん、こんばんは。

日本ではもっぱら新暦の7月7日を「七夕」と呼んでいますが、中華圏や東アジアでは農暦の7月7日に行う事が多いようです。もっとも、日本だって「七夕まつり」のようなものは8月に行う地域の方が多かったりしますけど。
行事の意味合いも各国で若干異なっていて、ことに台湾では「情人節」とも呼ばれ、日本で言うところの「バレンタインデー」みたいな日になっています。天空も地上もリア充のための日という、なんという逃げ場のなさ。

今年の農暦の七夕は8月6日。台北市大同区の大稻埕では、淡水河沿いを会場に、花火とステージイベントを中心とした「2011年臺北大稻埕煙火節」が開催されます。 わあ、なんというリア充向けイベント。 イベント自体は15時から21時半までやるのに、花火の時間帯は20時半から20分間というので、少し物足りないような、ラストじゃないのが不思議なような、と疑問だったのですが、どうやら花火の後に、ステージで伝統芸能の布袋劇をやるみたい。ふーん。なるほど、日本統治時代から文化の先進地だった大稻埕っぽくっていいんじゃないでしょうか。

が、これと時を同じくして、会場から数百メートルしか離れていない台北地下街でとんでもないイベントが行われるようです。まずは、20日の巴哈姆特の記事から抜粋して訳。

8月6日の大稻埕花火大会に合わせて、台北地下街では同日、日本っぽさ満載のイベント「第1回 夏花火浴衣まつり」を開催する。イベント当日は、地下街にたくさんの日本風のセットや販売ブースが並び、日本のお祭りのような気分を味わう事ができるだろう。

伝統芸能と萌え系アニメが融合 第1回「夏花火浴衣まつり」の情報がオープン (巴哈姆特)


これだけ読むと、「んーと、日本の夏祭りのような感じで地下街に露店なんかが並ぶのかな?」と思うのですが、上の元記事のタイトルで既にお分かりの通り、ここからあらぬ方向に走り始めます。続けて巴哈姆特から。

第1回の浴衣まつりでは、台北市政府が主催する大稻埕花火大会と連携する。李天禄(訳註:布袋劇の名人と考えてもらえれば)の遺作である布袋劇『巧遇姻縁(訳註:仮訳として『偶然の出会い』とかかなあ)』を題材として、また国内の著名なイラストレーターである櫻野露とのコラボにより、イメージキャラクターとストーリーを創作した。アニメの特徴である「萌え要素」と結びつく事により、故事の登場人物がアニメキャラ化され、今回の『七夕の恋』という日本風イベントのテーマが生まれた。
日中文化の融合と港沿いの各国の商社による文化的な洗礼を受け、かつての大稻埕はあたかも世界への玄関口のようだった。各国の商社は文化と知識を大量に台湾へ持ち込み、その果てしない文化の背景の力は、台湾の新世代のクリエイターにとって滅多に見た事のないものだった。主催者は、李天禄の作品が、斬新なスタイルによって、日本の大正時代のそうしたロマンの背景と雰囲気に台湾が負けない事を示せると考えている。

夕暮れの大稻埕を歩いていると、時折耳元に賑やかなお祭りの音楽が聞こえ、道の両側には日本式に彩られた露店が並ぶ。通りを行く観光客たちは爽やかな浴衣を身に纏い、お喋りをしている。しばらくすると、川沿いには一輪の煌めく花火が打ち上げられ、大稻埕の夜空を華やかに染めた。まるで、足を進めるにつれて、日本の風情が色濃い台北の旧時代に入り込んでしまったかのようだ。
没落した南北貨の商人の娘、潘玉枝と、新興の茶葉商人の子、蕭金俊。ハンサムな青年と魅力的な少女は、1945年の日本と当地の文化の交差点、大稻埕で知り合い、恋に落ちた。60数年の歳月がたった今日、当時の景色は既に失われてしまっていても、同じ場所ではなおもたくさんの美しいエピソードが詰まっている。

伝統的なお祭りの日本式の露店(たい焼き、ヨーヨー釣り、綿菓子)のほか、一般市民が浴衣を着てイベントを盛り上げられるよう、地下街のイベント本部では浴衣の販売も行うという。当日の台北地下街では、合計で770元以上の買い物をすれば、浴衣の体験ができる催しもあり、専門のスタッフが着付けも手伝ってくれる。同時に、当日は農暦の七夕にあたることから、イベント本部では、恋人や夫婦の楽しいデートのための企画も行うという。
第1回七夕の恋「夏花火浴衣まつり」のメインイベントは8月6日の土曜日、13時から21時まで台北地下街で開催される。興味のある人は、オフィシャルサイトから最新の情報をチェック。

伝統芸能と萌え系アニメが融合 第1回「夏花火浴衣まつり」の情報がオープン (巴哈姆特/強調は引用者)


つまり、どういう事かというと、

yaguyagu135.jpg

が、

yaguyagu136.jpg や、yaguyagu137.jpg

になって、さらに

yaguyagu138.jpg や、 yaguyagu139.jpg

と、なるわけ。

ぱないの!
オフィシャルサイトはまだ全てのコンテンツが出来上がっていませんが、逆にそれによって「力の入れ方の間違い具合」が露わに。

ちなみに、キャラクタを描いた櫻野露さん、どこかで名前を見た事があるような、と思っていたら、
 【海外】国産ドライパイナップルのラベルに二次元キャラ「鳳梨娘」、デパ地下に進出 台湾
 http://toki.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1298989189/

あなたか。
珍しくリクエストがあったので6月21日の聯合報から訳。台湾の男性声優、官志宏さんのお話。

かつて台湾でテレビを点ければ、彼の声を聞かない事はなかった。『SLAM DUNK(台湾題:灌籃高手)』の流川楓、『ヒカルの碁(台湾題:棋靈王または棋魂)』の藤原佐為、TVアニメ版『花より男子(台湾題:流星花園)』の道明寺司、また韓国ドラマの『冬のソナタ(台湾題:冬季戀歌)』、ディズニー映画の『プリンス・オブ・エジプト(台湾題:埃及王子)』......、これらの作品では、ベテラン声優の官志宏が中国語の吹き替えを行っている。最近では、彼はより多くの「声優」を育てるための講義を始めようとしている。

官志宏には、28年間にもおよび中国語吹き替えのキャリアがあり、これまでに吹き替えを行った作品は数百にも上り、両岸の業界でも有名となっている。千変万化の人を引き付けるその声は、かつてアニメ『名探偵コナン(台湾題:名偵探柯南)』で、毛利小五郎、服部平次、怪盗キッド、黒の組織のジンを演じ分けた。4人の異なるキャラクタがお分かりになるだろうか?
「吹き替えは一種の芸術であって、技術ではない。志業であって、職業ではない」。官志宏は、自分自身を「劇中の人物の通訳」と捉えるのではなく、「声の俳優」だと考えていると話す。彼は世界新聞専科学校(後に世新大学に昇格)を卒業した。先輩の紹介で放送劇に触れ、後に中央広播電台に就職した。かつては、饅頭一つと落花生一袋で2食に充てた時期もあったが、吹き替えに対する熱い想いはずっと変わらなかった。
一部分を担当する吹き替え者が、動画を観ながら録音をする事を選ぶ時でも、官志宏はやはり全てを観てからでないと録音しない。彼は時間をかけて観察してキャラクタの性格に溶け込み、画面と声の関係を考え、さらには全ての言葉の存在の必要性も斟酌するのだった。
映画『おくりびと(台湾題:送行者)』では(訳註:ただし、官志宏が吹き替えたのは、山崎努の演じた佐々木生栄)、父親の遺体が当時彼に渡した石を握っているのを息子が見つけ、雨が降るように泣いた場面で、官志宏は言葉を発しなかった原作の通りにしない事を選んだ。「監督は、手の上を画面に映し続けることで観客に泣く時間を与えようとしたのだろうけれど、もし君が息子だったら黙っている事なんてできるかい?」 官志宏は、原作に数秒早くむせび泣く声を入れる事を選んだ。これが彼のプロとしてのこだわりだった。

数年前、官志宏は両岸の吹き替え産業の展望と自分の計画との間で戸惑いを覚えた。彼は法鼓山でボランティアをする事を決め、聖嚴法師が生前彼に言った「するもしないも、その一心による」の道理を体得した。
「大陸の声優たちは厳しいレッスンを受けてきている。ガッツを軽んじてはいけない。もし我々が意地を見せなければ、おそらく数年後には中国語吹き替えの委託工場に成り下がってしまうだろう」。官志宏は昨年、いくつかの制作会社を立ち上げ、15年後には再び授業を開くつもりだ。参考書を使わず、全て自分が作った教材を使うという。

流川楓、毛利小五郎 「声」は一人によるもの (聯合報/強調は引用者)

何それ。いや、確かに日本でも『まんが日本昔ばなし』の市原悦子&常田富士男というのがあったけど、明らかに酷使というか人材が足りていないのでは。ちょっと気になったので調べてみると、つべに映画『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』があったので、毛利小五郎、服部平次、怪盗キッドが登場するあたりを観てみる事に。



なるほど、まったくわからん。

ちなみに、中国語版Wikipediaで調べてみると、この他にも4人以上の声を吹き替えている作品はあるようで、
★ 8人+1
 ・アニメ『彩雲国物語』:茈静蘭、紅黎深、景柚梨、霄瑤璇、藍龍蓮、魯尚書、加来、茶克洵、ナレーション
★ 8人
 ・アニメ『冒険遊記プラスターワールド』:ザガリアン、ガブリオン、タンキュー、ドリューン、フェザード、ギンガード、ゴンゴラゴン、ヴァローゼ
★ 7人+1
 ・アニメ『妖逆門』:須貝正人、多聞三志郎の父、幻風堂の主人、ギグ、華院重馬、華院要、里村修の父、ナレーション
★ 7人
 ・アニメ『犬夜叉』:弥勒、殺生丸、冥加、蛮骨、銀骨、凶骨、竜骨精
 ・アニメ『ソウルイーター』:デス・ザ・キッド、オックス・フォード、デスサイズ、シド・バレット、ギリコ、ミフネ、マサムネ
★ 6人
 ・アニメ『ふしぎ遊戯』:星宿、軫宿、心宿、氐宿、婁宿、梶原哲也
★ 5人
 ・アニメ『H2』:木根竜太郎、明和一高の監督、雨宮高明、広田勝利、橘英雄
 ・アニメ『忘却の旋律』:黒船バラード、ツナギじいさん、ニック、グローバルやまねこ、ラッキーさらぶれっど
★ 4人
 ・アニメ『中華一番!』:ルオウ大師、リー提督、ラコン、張大人
 ・アニメ『DAN DOH!!』:赤野拓也、新庄樹靖、石神一郎、笠清也
 ・アニメ『BLACK CAT』:スヴェン=ボルフィード、ナイザー=ブラッカイマー、シャルデン=フランベルク、メイソン=オルドロッソ
 ・アニメ『タッチ』:松平孝太郎、新田明男、上杉信悟、西尾茂則、
 ・アニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』:大神博士、山さん、源さん、阿為(訳註:誰これ)
 ・アニメ『SLAM DUNK』:流川楓、田岡茂一、相田彦一、清田信長
 ・アニメ『魔法騎士レイアース』:ランティス、クレフ、ザガート、イノーバ、
★ 3人+1
 ・アニメ『ビーストウォーズII 超生命体トランスフォーマー』:ライオコンボイ、スカイワープ、モーターアーム、ナレーション

と、ずらり。他にも韓国ドラマの吹き替えで5役やっていたりするようです。というか、これだけ何役もやっていると、「俺対俺」の戦いや勝負がごろごろしていますね。すごいなあ。あれ? でも、日本でもこういうのを最近観た気がするなあ、と思って記憶をたどったんですが、これでしたごめんなさい。

 

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