というわけで、今回も台湾のACGのお話でございます。(えー。
かつて麻生政権時に計画が持ち上がり、昨年の補正予算見直しで執行が停止、撤回された「国立メディア芸術総合センター」という構想がありました。あの「国営マンガ喫茶」とか「アニメの殿堂」とかって呼ばれていたあれです。
そもそも、この構想は何かって言うと、「メディアアート,アニメーション,マンガ,ゲーム,映画等,複製技術や先端技術等を用いた総合的な芸術」を「メディア芸術」と呼び、その全ての分野を対象に「収集・保存・修復,展示・公開,調査研究・開発,情報収集・提供,教育普及・人材育成,交流・発信等を行う国際的な拠点とする」ことを目的としていました。(ここまで、文化庁の「国立メディア芸術総合センター(仮称)基本計画(平成21年8月)」(PDFファイル)から)
この計画ほど多岐に渡らず、またハコモノとしての規模も全然違うのですが、先週台湾の国家図書館に国内外のマンガ1万冊あまりを揃えた「マンガ室」ができました。日本で言うと、国立国会図書館にそういう専門コーナーができたというイメージでいいかなあ。まずは23日の聯合晩報から抜粋で。
国家図書館の「マンガ室」が23日オープンした。マンガの「ブランドショップ」と称され、国内外のマンガ1万冊あまりを蒐集している。またデジタル創作ソフトも提供し、読者もマンガ作家を体験できる。国家図書館の顧敏館長は、「この国家規模のマンガ室が台湾本土のマンガの新鋭を育む揺り籠となることを期待している」と話す。
(略)顧敏館長は、「マンガは重要な文化創造の産業であり、読者は人種や年齢に関わりない。映画化やTVアニメ化、ゲーム化といったマンガの関係周辺商品も非常に多く、マンガブームは今も熱を保ったままだ。国家図書館は、マンガを愛する読者のために提供するとともに、本土のマンガ産業の発展を促進するよう政府に働きかける。特に、延平南路156号の『芸術および視聴資料センター』の3階に設置される『マンガ室』は、本土のマンガ創作者に、交流、学習、作品発表の場を提供するものだ」と話す。
顧敏館長はまた、「若者らが台湾のマンガ創作に対する再認識することをリードするため、『マンガ室』では人気マンガ、教育マンガアニメ図書、国立編訳館から優良マンガとして受賞した作品など、およそ1万冊あまりの図書を特別に選定した。このほか、所蔵の動画、教育フィルムおよびアニメに関する動画資料など145点、2機のアニメコンピュータソフトがあり、読者がマンガ創作体験することができるようになっている」と述べた。マンガ室が国家図書館に進出 (聯合晩報/強調は引用者)
ついでに、国家図書館のサイトにあったプレスリリースからも、その目的というか意義みたいなものの部分を抜粋して訳。
(略)しかし、これまでずっとマンガ本は低俗な出版物に分類されていた。そのため、国家図書館の「マンガ室」が開館したということは、人々からの注目を集めることとなった。国家図書館といえば、図書館の中の図書館ともいうべき存在だ。今やマンガ本は国家図書館に所蔵されるような出版物となったのだろうか?
顧敏館長も開館の挨拶の中でこのように語っている。「マンガは自由な創意と想像による産業であり、文化の創意とデジタル産業の源の一つである。国家図書館の『マンガ室』の開館は、台湾のマンガ創意産業に対する支持の証といえる。マンガ室によって、優れた才能に満ちたより多くの若者たちをマンガ創作に打ち込ませるようになることを期待するとともに、台湾のマンガ文化産業が世界で光り輝くことを望んでいる」(略)国家図書館が本土マンガを創作するフレームを作る 芸術および視聴資料センターで漫画室が盛大にオープン (国家図書館・国家数位図書館)
ということで、マンガ室の設置そのものは決して国営マンガ喫茶というわけではなく(実際そうなるかどうかは別として)、資料の蒐集とそれによる人材育成なのだというわけ。どこかで聞いたような考え方ですね。ところが、その目的があるためこんな「弊害」も。
国内のマンガにおける最も主要な読者層は青少年だ。しかし国家図書館のマンガ室は入館し閲覧できる年齢を19歳以上に制限している。これは理にかなっていると言えるだろうか?国家図書館はこれについて、国家図書館の位置付けはその他の図書館との違っており、他国の国家図書館の多くも18歳以上が入館できるようになっている、と説明している。
国家図書館視聴センターの厳文英は、「図書館法によれば、国家図書館と郷鎮の図書館、学校の図書館とは位置付けが異なり、『蒐集、整理、全国の図書をアーカイブする』ことや学術研究の推進を目的としている。図書に破損の懸念があれば、所蔵されたらもう公に閲覧することはしない。マンガもまた同様で、そのため本館および分館とも入館を19歳以上に制限している」と話す。
しかし多くの青少年は、マンガとその他の所蔵図書の性格は異なるものであり、就学年齢以上の学生には入館し閲覧することを認めるべきではと考えている。マンガ『ONE PIECE』が好きだという国立政治大学附属高校1年生の黎子揚は、「国家図書館のマンガ室は、19歳以下の青少年も入れるように他に1区画作ることを計画するべきだ。そうでないと使われることによる便益が低い」と建議する。現在、多くの同級生はネット上でマンガを読んでいるという。無料というだけではなく、内容の更新も速いからだ。
また、小学校3年生の李宜家は、マンガが大好きだけれども小学生がマンガ室に入れないのは不合理だと話す。「小学校に上がれば本を大切にするようになる。簡単に本を破いたりすることはない」(略)国家図書館のマンガ室は19歳からに制限 青少年:厳しすぎるだろ、常識的に考えて (聯合報/強調は引用者)
難しい問題だとは思うんだどね。趣旨に重きを置けば、幅広い年代の眼に触れることの意義は大きいです。とは言え、やりすぎるとそれこそ「国営マンガ喫茶かよ」っていう指摘も出てきそうなもんだけど、それは記事ではとりあえず見当たらないようです。まあ、仮に最初から「6歳以上」にしていたら逆にそういう指摘になっていたかもしれないんだけどさ。
そしてもう一つ指摘を受けているのが「どういうマンガが並んでいるか」というもの。決してcensoredな内容っていう意味じゃなくて、「台湾の国家図書館が所蔵するマンガが、どこの国のマンガか」というもの。以下聯合報から抜粋で訳。
マンガ本がついに堂々と我が国の国家図書館の書架に並んだ。23日、国家図書館の芸術視聴資料センターに「マンガ室」がオープンし、全部で1万冊あまりのマンガが所蔵された。しかし、その9割以上は日本のマンガだ。
「マンガ室」では、普通に書店で借りるようなよくある少年少女マンガのほか、大陸から購入した線装で綴じられた画仙紙の古いマンガ本「孫悟空三打白骨精」や、フランスの著名なマンガ家ジャン・ジローの選集、「豊子愷漫画全集」16冊、「ロシア挿絵作品集」、さらには「三民主義漫画アルバム」、かつて愛された「娃娃看天下」や「三毛流浪記」も収められている。
マンガ家の劉興欽は「マンガ室」のオープニングに参加した。彼は、これまで上品な場所には出せないと思われてきたマンガが国家図書館で閲覧できるようになったことに、心中とても感動していると語った。しかし一方で「書架にあるほとんど全てのマンガは日本のマンガだ。これでは、台湾は日本の属国だと誤解させてしまう」とも語っている。(略)国家図書館にマンガ室がオープン 9割は日本マンガ (聯合報/強調は引用者)
おっと、もちろん最後の「属国」発言に噛み付くつもりはないですし、この期に及んで親日反日だっていうくだらないお話をするつもりもありません。
日本の側から見れば、こうしたライブラリが台湾でできあがったのはちょっとした皮肉な事態。日本は、それだけのスペースを占めてしまう「日本のマンガ」のパワーをもうちょっと認識し、もうちょっとだけ上手く活用するべきなんじゃないかなあ。逆に、それだけの「お手本」を揃えてしまう国がお隣にあるわけでですから、いつまでも日本に優位性があるだなんて断言できません。ゆめゆめ油断めされるな、ってとこでしょうかね。
他方台湾の側から見れば、国家図書館の「マンガ室」が「日本マンガ室」状態になってしまっているという皮肉な現実。そこで国産にこだわらないっていうのも一つの選択肢だと思うんだけど、国家図書館は設置の目的を「本土マンガ家の育成」と銘打っちゃってます。だったら、なおのことこの現実を踏み越えて、「やっぱり国営マンガ喫茶だったのかと」と言われないようにしないといけないよね。
というわけで、最後に25日の聯合報のうち黒白集から抜粋して訳。
マンガ室がついに国家図書館に誕生したが、その収蔵本の約9割が日本で出版されたものだった。マンガ家の劉興欽は「日本の属国と誤解させてしまう」と話している。
(略)それによって「日本の属国」に没落することはないと言われていることについては、かえってマンガだけの問題にとどまらない。実際、台湾にある映像や音声を用いた作品は、みな「外来種」の侵略に遭っている。日本ドラマ、韓国ドラマ、香港ドラマなどはもちろんのこと、大学のキャンパス内にも大陸の作家が書いたものや中国語訳本といった簡体字の辞書事典の類が泛濫している。
こうした脅威を受けているが、実はまだまだ発達途中の状態だ。その要因は、市場規模が小さいことやコスト高で、そのためクリエーターが育っていない。小さなヒット作でもあれば食べていけるような、規模の大きな大陸の市場とは異なっている。しかしそれゆえに、この傾向の深刻さは、台湾の読者や視聴者が外国からの作品を受け入れるというだけにとどまらず、やがてが創作者が製作の過程で切磋琢磨する機会も失い、国家の創造力の深刻な退化を招きかねない。そうなれば、全ての文化において自らの鎖の精密さを失うことになる。この「グローバル化」する映像・音声情報の市場の中で、台湾はどうすれば全体に影響を与えるような役割を作り出すことができるのか。これは、ここ数年ずっと国家政策レベルでのテーマとなっている。偶然にも「海角七号」や「艋舺」といった作品が「台湾の光」とも呼ばれるものとなった。しかし、もし台湾が日本のマンガや韓国ドラマ「大長今」といったような文化の違いを超越するような作品を生み出さねばならないとしたら、より大きな努力をする余地があるかもしれない。
日本マンガは我々の国家図書館で9割を占めた。これはそれらが文化を超越する浸透力を持っているからだ。もし、台湾も世界の映像・音声作品の世界で一角を占めたいと思うのならば、まずはそうした能力を備えることが必要だ。
台湾における日本マンガ (聯合報)
結論の部分で割と「ずこー」ってなっちゃうんですが、むしろ中盤で出てきた台湾の市場の特性みたいなものが重要なんじゃないかなあ。国産のクオリティを上げるためには、作り手の質と量を高めると同時に読者の質と量を高めることも必要。日本のマンガが後者に一役買ったのは紛れもない事実。さあ前者についてはどうだ、っていう。
そう考えると、今回の「マンガ室」が台湾の作り手さん育成に直接貢献するのかっていうとかなり怪しいんですよね。でもこれが本当に上手くいけば、文化の発信だの日本に対する好感度うpだの輸出品だのっていうこれまでの「マンガの価値」に加えて、新しい意味を持たせることになるんじゃないでしょうか。そういう点でちょっと気になっています。さてこの「マンガ室」、奇貨とすることができるのは台湾か、それとも日本か。次回作にご期待ください。っと。
★ 補記(03/04 12:10)
最後の聯合報・黒白集の誤訳をなんとなく直しました。いつもTHXです。いいぞもっとやれ。しかしなんと言うか、適当だなあ、自分。
1980年代の中国で生まれた彼らのような世代は「80後」と呼ばれ、1979年に始まったいわゆる「一人っ子政策」の下、また特に沿岸部では改革開放の波もあり、親の寵愛と経済的な豊かさを一手に受けた「幸せな世代」としてみなされることが多い世代でした。日本では「小皇帝」っていうイメージが強いかもしれないですね。強引に日本に当てはめるといわゆる「バブル世代」にあたるのかなあ。おっと、これには異論が多々あると思います。年代の捉え方もそうだし、その年代を一括りにすることも含めてね。おいらだって、自分たちの世代が「失われた世代」と十把一絡げに言われるのは嫌だもん。
そんな「80後」世代なんですが、15日の広州市(広東省)の党機関紙、広州日報が報じた調査によれば、必ずしも「幸せな世代」とは言えないようです。元の記事は広州日報の「「80後」の生活状況大調査」を見てほしいのですが、今回はそのまとめ版とも言える香港の明報の記事から訳。だってこっちの方が短いんだもん。
「80後」と言えば香港では最もホットなキーワードの一つだが(註:この場合、2012年のダブル選挙での普通選挙導入や、広深港高速鉄道などを訴え、ネットを中心に集まってデモなどを行う20代の若者を指す。)、内地の多数のメディアが先日共同で行った「80後」の調査が行われ、広東、北京、上海、浙江などから3,300人あまりの「80後」がネットでの調査に回答した。調査の結果、70%近い「80後」が「幸福感が強くない」「生活水準に満足していない」と回答し、中でも家を買うことが彼らの生活の最大のプレッシャーになっていることがわかった。また、約3分の1の回答者は、社会が彼らを「反抗的、身勝手、オタク」などとマイナスなレッテルで過度に見ているとして不満を述べている。
内地のいわゆる「80後」は、中国で行われた「一人っ子政策」の後に生まれた世代の者たちを指しており、ある統計によれば2億人を超えるグループだという。「広州日報」は新浪網や大洋網そして「現代国際市場研究」とともに先日、「80後」世代の生活の有様を調べる大調査を行った。報道によると、今の中国社会は「80後」の青年らの独自性を育てるものに転換しており、こうした温室育ちの「小皇帝」には「ビート・ジェネレーション、反抗的、利己的、ひ弱」といったマイナスの評価が乗っかり、さらに「どら息子、房奴(註:長期の住宅ローンを組んだ人を見下した言い方)、カード奴(註:同様にカードで多くの債務を抱えてしまった人)、蟻族、オタク」などの社会現象も生み出した。
調査によると、都市部に住む「80後」の暮らしのプレッシャーは相当のものがあるようで、40%の回答者は「家の購入、子供の養育」がプレッシャーだと感じており、30%近くの者が仕事で感じているようで「仕事を飛び出ることが非常に大変だ」と答えている。またある回答者は「社会全体に圧力の元があり、息が詰まりそうだ」と答えている。
30%の「80後」は「月光族(註:月給を全て使ってしまい貯蓄する余裕が無い人のこと)」で、毎月の収入は基本的にその月のうちに使いきってしまうという。また「車を持っている者」は10%に満たない。さらに、家を買うことについて40%近くが「結婚のため」と答えているが、「自分の預金から一括で払える」と答えたのは20%のみだった。このほか、40%近くの「80後」は毎月毎月父母に対して仕送りを行っていることがわかり、このことからも、決して一部の人が憶測で語っているような「親の脛齧り」ではないことが説明できる。
仕事面では、回答者の多くがこれまで転職を経験しており、うち50%近くがすぐにでも転職したいと答えている。これは、共通して彼らのグループが自分の今の成果に不満を抱いているが、頻繁に転職しても適した職に巡りあえていないことが反映されている。このほか調査では、「80後」の理想は4つの分野に集中していることがわかった。一つは「家があり車があること」で、特に家を持つことだ。第二は「事業で成功すること」、三点目が「金持ちになること」で、特に老板になることだった。最後が「公務員あるいは科学者のような『社会にとって役に立つ人』になること」だった。
とまあ、日本でも記事にあるマイナスなイメージの残る「一人っ子政策」世代ですが、現実はそうでもないようです。考えてみれば、結婚したら夫婦で4人を支えなきゃいけないし(まあ、4人を支えようとする子ばかりかっていう話もあるんですけど)、子供が生まれればなおのことだもんね。自ら少子化を進めた国の最大の被害者なのかもしれません。
しかも、蟻族のように自分ひとり分の幸せすら手元に残せない人も多くいるようで、迷路人さんのところにあるような叫びもますます痛切に感じてくるというものです。
昨年5月の「「けいおん!」の原作マンガが台湾で6月 12日に発売になるらしい。」や7月の「「けいおん!」の原作マンガ第2巻が台湾で8月12日に発売になるらしい。」に続き、いよいよ来月から台湾のアニマックスでアニメ第1期が放送されるそうです。日本では4月から第2期が放送されますけど、台湾ではどのくらい人気を得ることができるかな。もっとも、人によっては台湾でも既に、......いやなんでもないです。
というわけで、今さらですが3日のぐぬぬから訳。
人気アニメ作品『けいおん!(中国語題:K-ON!輕音部)』の第1期アニメが3月から台湾でも放送開始になることが正式に決まった。
漫画家かきふらいによる四コママンガが原作。この『けいおん!』のストーリーでは、廃部になりかけていた「軽音楽部」が、4人の部員を揃えなければ廃部という運命を避けられないというところから始まる。田井中律、秋山澪、琴吹紬の3人の女子生徒が加入した後、主人公の平沢唯が思いがけず最後の1人として入ってくる。
音楽についてはずぶの素人である平沢唯だったが、部活ではギタリストとなり、さらにベース、ドラムス、キーボードの3人とともに、青春らしい楽しさに満ちたスクールライフを展開していく。
アニメ『けいおん!』は3月24日からAnimaxアニメチャンネルで放送を開始する予定だ。興味のある者は、公式サイトで公開される詳細な放送時間をチェックし損ねないように。アニメ『けいおん!』が3月から台湾Animaxで放送開始 (巴哈姆特)
ちなみに、放送時間は月曜から金曜までの20時30分~21時、今の『彩雲国物語』2期の枠になるみたいです。これとは別に香港のアニマックスでも3月9日から放送されるとか。
もう一つおまけで誰得情報。昨年夏に公開されヒットした映画『サマーウォーズ』ですが、5日のぐぬぬによれば、台湾でも5月28日から公開される予定だそうです。
最後に。くどいようですが、このブログはまず何よりもニk(そげぶ
よくよく考えてみれば、あの北京五輪からも2年、正確に言えば1年半もたつんですね。そんな北京五輪に沸いた2008年の暮れ、いわゆる「08憲章」が発表されました。その起草者の一人である劉暁波に先日、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の刑言い渡されたところです。
これについては日本でもそこそこ報道されていますが、今日のお話はその後の出来事について。判決が出た11日は、折りしも春節前最後の外交部報道官定例記者会見の日(もっとも、オバマ・ダライ=ラマ会談を受けて12日にも記者会見してますけど)。この話題についても記者から質問があったみたいだけど、そこでこんなやり取りがあったそうです。産経ソースで11日共同電から。
「中国にはディシデント(反対派)は存在しない」。中国外務省の馬朝旭報道局長は11日の定例会見で、中国共産党独裁体制の廃止などを呼び掛け、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受けた劉暁波氏らを指して外国記者が使った表現に「あなたの言葉は誤りだ」とかみついた。
局長は「中国は法治国家であり、犯罪か非犯罪かの区別があるだけだ」と強調。劉氏は反対派だから投獄されたのではなく、法に反したからだと言いたかったようだが、「反対派」存在の否定は、かえって党や政府の考え方しか認めない中国の独裁体質を印象付ける形となった。
別の記者がさらに「ディシデントは政府の政策に同意しない者の意味だが、中国にはいないのか」と追及すると、局長は「言葉の定義で議論したくないが、中国ではこの言葉の使用は適切でない」とかわした。(共同)「中国に反対派は存在しない」外務省報道官が記者の質問にかみつく (産経新聞・強調は引用者)
この概念の話に触れてしまうと、『ザ・ワールド・イズ・マイン』の「体制か、反体制かだ」という台詞を引っ張ってきたりしておいら自身が止まらなくなってしまうので、まずはどのような応答があったのかを見てみましょ。中国外交部のサイトから11日の定例記者会見を訳。長いので、今回の「反対派」とは関係ない話題は記者からの質問のみ訳します。
皆さんこんにちは。春節前最後の記者会見にお越しいただきありがとうございます。まず初めに、楊外交部長から皆さん宛ての挨拶をお伝えします。「皆さん、新年明けましておめでとうございます!」さて、慣例に倣い、春節の休暇期間は定例記者会見をお休みします。春節明け最初の記者会見は、2月23日(火)に行います。皆さんどうかご参加ください。
続けて一つお知らせがあります。中国政府の特使として文化部長の蔡部長が2月18日に行われるクロアチアのイボ・ヨシポビッチ新大統領の就任式典に出席します。
それでは、皆さん質問があればどうぞ。Q:オーストラリア政府は先日、中国政府が透明な方法により速やかにリオ・ティント社の事件を解決するよう求めている。中国政府はこれに対しどのように応えるか?また二つ目の質問ですが、イラン政府への新制裁実施について、中国政府はどのような状況になれば、フランスやアメリカなどの国に呼応し賛成するのか?
Q:報道によれば、アメリカ経済に回復の兆しが見えることから、FRBでは必要な際に「出口戦略」を実施することを考慮しているそうです。中国政府のこれに対する立場はいかがか?
Q:中国政府は、最近設立が決まった朝鮮半島事務特別代表にどのような考えをお持ちか?
Q:スリランカの最近の情勢と、反対派のリーダーが逮捕されたことについて関心をお持ちか?また、中国政府とスリランカ政府との間でこの件でやりとりは?
Q:報道によれば、アメリカの空母ニミッツが来週香港に寄航するそうだが事実か?
Q:北朝鮮の金桂冠・外務次官の訪中日程について回答可能か?また武大偉は今後も六者会談で中国代表団の団長を務めるのか?
Q:ミャンマー政府は先月、22人のウイグル族を送還したが、彼らはどのような理由で送還されたのか?また近況如何?
Q:リオ・ティント社の事件の具体的な進展をもう少し教えてほしい。この事件は公開審理がなされるか?オーストラリア政府の強い関心に対し何らかの回答はあるのか?
Q:先ほど、スリランカ情勢について「内政の話だ」と答えたが、近年ではEUやアメリカ、日本などの国もスリランカ情勢に関心を示している。また同時に、中国は港湾や空港の修繕などスリランカへの援助を増加させ続けている。中国政府として、この大幅な援助とスリランカの内政に対する不干渉との関係についてどのように説明するのか?
Q:EU各国は先日、ギリシャの債務危機に対する援助措置を呼びかけていたが、中国政府としてギリシャに対して救いの手を差し伸べるつもりはあるか?
Q:ある報道によれば、中国政府はイランに存する石油利益のため、制裁実施を望んでいないとされている。これに対する見解は?
Q:中国政府はかつていかなる企業も台湾に対して武器を売却することに反対していた。しかし台湾は先日ヨーロッパの企業から3機のEC225型ヘリを購入した。中国政府として、この企業に対する制裁の実施を考えているか?もし他に質問がないようであれば、同僚である秦剛と姜瑜を代表し、皆さんに新年の挨拶を伝えたい。皆さん寅年を迎えおめでとうございます。皆さんにとってよいことがありますように!来年も、我々の記者会見がスムーズに、かつ内容豊かに行われることを願っています。また、皆さんの仕事も順調に、取材で新たな進展が得られることを祈っています。
皆さんありがとう!ごきげんよう!2010年2月11日外交部発言人・馬朝旭による定例記者会見 (中華人民共和国外交部)
っておい、終わっちゃったよ!11日の朝日新聞の報道によれば、この会見では劉暁波の控訴審判決そのものについてもコメントがなされているはずなのですが、どうやらこの話題そのものについてカットされている模様。
(略)中国外務省の馬朝旭報道局長は同日の記者会見で「中国の内政と司法の独立に干渉すべきではない」と反発した。最高人民法院(最高裁)は9日、国家や政権に危害を及ぼす行為に対し、さらに厳罰で臨む方針を発表していた。今後、人権活動家に対する国家政権転覆罪による摘発がいっそう強まる可能性がある。(略)
「08憲章」起草者の実刑確定、二審も国家転覆行為認定 (朝日新聞)
試しに百度のニュース検索で、劉暁波をキーワードに検索してみたら「その検索結果は、関係法規や政策に合致しない内容に触れてしまっている恐れがあるので、見せることはできません」って怒られてしまいました。仕方ないね。
辛うじて簡体字メディアで報じているのはVOAとシンガポールの聯合早報ぐらいかな。聯合早報の記事によれば、この質問をした「外国記者」はVOAの記者だったみたい。なんていうか、あ、やっぱり。ということで12日北京電の聯合早報から抜粋して訳。ごめんね、香港紙はチェックしてないっす。
(略)中国外交部の馬朝旭発言人は11日の記者会見で「中国にはdissident(異なる政治的見解を持つ者や異なる意見を持つ者)は存在しない。我々は法に基づき物事を行うのみで、そこには犯罪者か犯罪者でないかの区別があるだけだ」と語った。
これについて、馬朝旭はVOAの記者の質問に答える際、以下のように解説した。
「dissidentの定義に関してだが、あなたの英語はきっと私よりも上手だろう。しかし私はこの定義についてあなたと議論をするつもりはない。あなたはきっとこの皆さんが同意するような定義を見つけ出すことはできないだろう。この類いの人物、あなたが言うようなこの類いの人物が中国に存在するかというと、あなた自身で判断するべきではないだろうか。しかし、私の理解において言えば、この言葉をこの場所で使うことは適当ではないと考える」(略)二審への上訴でも原審を維持 劉暁波に懲役11年 (聯合早報)
上手く定義をはぐらかしてますが、要は「反対派などいない!」という中の人理論ですし、「(反対派なんて)中国に誰もいませんよ」という、......ってごめんなさい、超脱線しました。もとい、考え方としては中の人理論なんでしょうね。傍から見るといかにも「そういう人がいる」んだけど、当人にしてみれば「その言葉は不適切だ。少なくとも俺にしてみればそんな人はいない」という。
いずれにしても驚きなのは、というよりも「ああやっぱりか」というのは、反対派の存在どころか、そういう応答があったことさえオフィシャルには存在を否定してしまうところ。それだけセンシティブな内容っていうことなんだろうけどね。それ以上に、この国はまだそんなことをやるのか、っていう虚無感にげんなりっす。
そういえば、上で書いた外交部の記者会見の記事では、トラの縫いぐるみを持った馬局長の写真もあるのですが、まあ「寅年を迎えるにあたってのちょっとした小ネタかな」と思いきや、このトラ、張子の虎どころかきちんと牙も持っていたようです。以下、当該記者会見を報じる11日の中国新聞網から抜粋で訳。
(略)記者からの10あまりの質問に答え終わり、記者会見がまもなく終わろうとしていた際、馬朝旭局長は寅年の吉兆のシンボルであるトラのおもちゃを取り出し、会場の内外の記者に早めの新年の挨拶を行った。
(略)会場の雰囲気はにわかに暖かく活気を帯びた。内外の記者たちは次々にカメラを持ち、発言台でトラを携えた馬局長を何度も何度も写真に収めた。
馬朝旭はユーモアを交え、来年は寅年であるから、記者会見場で質問する際には特に注意し、特に慎重であってほしいと語った。「さもなければ、『こいつ』はきっと答えないだろう」。馬朝旭は笑いながら手にした獰猛なトラを持ち上げてみせた。(略)外交部発言人、内外の記者に向けて「寅」年の挨拶(写真あり) (中国新聞・強調は引用者)
虎の尾を踏むことなかれ、ってとこですかね。おお、こわいこわい。
前フリもいろいろめんどくさいので、泣く子も黙るバレンタインデーに向けて1日の聯合報の社説でも。
台湾の女性は昨年、平均すると1人の子供しか産んで育てていない。出生率(訳註:この場合は、単純に人口1人あたりに対する1年間に産まれた子供の数)は、0.00829(訳註:つまり人口1,000人あたり8.29人しか産まれていない)となり、世界でも最も少ない国となった。結婚人数も過去最低を更新し、わずか11万組あまりしかカップルが生まれず、逆に離婚者は5万組を超えた。さらに注意すべきは、高齢での出産育児の風潮が出来上がり、30歳以上の妊婦が「増産報国」の主力となっていることだ。
この数字は、経済建設委員会にとって強烈なパンチとなった。一年余り前、経建会は次のように揚言した。すなわち、台湾の人口に「ゼロ成長」が生じる時期について、当初推計では2018年だったが2027年まで遅れるというものだった。その理由として、政府が既に多くの奨励策を講じていることが挙げられ、若者が出産育児をしやすくなり、合計特殊出生率は1.1人から1.4人に上昇すると見込まれていた。しかし、若い世代は政府の独りよがりな奨励策に全く無関心で、出生率が上昇に反転しないのは、政府の人口政策が机上の空論にしかすぎないことを証明している。
台湾の人口の変遷は、結婚離れに始まり少子化、高齢化に達した。実際にはより深い社会的要素や心理的要因があり、全般的な視点からに明らかにしてこそ、有効な対策が打ち出せる。出産補助を行うことを軽々しく考えるのは、確かに若い世代の出産育児を奨励することになるかもしれないが、単に政府が一方通行な考えをしているだけでは、少子化の解決には根本的に何の役にも立ちはしない。
結婚の件数減と出生数の減少は、全世界の社会の移り変わりにおける共通の現象であり、台湾独特のものではない。異なる点としては、欧米の先進国が1960年代に低出生率に陥ったものの、調整を行い再出発したことで、この10~20年は回復傾向が見られていることだ。アメリカの出生率は、このところ2人前後を維持している。ヨーロッパの平均も1.4人だ。これとは対照的に、台湾では民国40年代こそ1人の女性から平均6人の子どもが産まれていたのに、政府は「2人がちょうどよい」という産児制限政策を推進した。この結果、わずか半世紀で台湾は世界最低の水準まで落ち込み、このような激しい変化は、油断によるものではない。
台湾の若者たちにおける結婚や出産の願望は、なぜこんなにも低くなってしまったのか?正面から見ると、若い世代が自由を求め、拘束されない生活をより好む傾向にあり、父母のように結婚や家庭に束縛されたくないと思っていることがある。これは自我の実現を趣旨とする人生観であり、それそのものは非難するべきものではない。出生数の適度な低下は、環境への負担を低減することにもなり、生存競争の圧力を下げることから、必ずしも良いことでないとは言い切れない。仮に、仲が悪くなった夫婦が、同居する相方への不満から喧嘩の絶えないようなことに耐えられず、離婚人口が毎年増加していても、社会の考え方がより開放的な観点に移りつつあるのを考えれば、これもまた全く悪いこととは言えないだろう。
減少せず逆に増える、これは若者世代に対するプレッシャーを軽減する方法がないことが主要因だ。より一歩進んで台湾自身の特殊な要因を見てみると、この10~20年来、政治的ないざこざが絶え間なく続き、族群や社会の亀裂はだんだんと大きくなっていった。より重要なのは、政争が激しくなる過程の中で、台湾の経済的な実力も頓挫し、国家の誉れも霧散してしまったことだ。考えてもみてほしい。心配事や不安に満ちた社会の中で、国民は自分の幸福を探すことなどできない。いったい誰が、後世の世代をこのようなつまらない環境に産まれさせたいと思うだろうか?
新竹市では数年前から出産育児の補助の政策を開始している。第一子を産んだ母親に、少なくとも1万元の手当を支給するというものだ。これにより、新竹市は台湾全体で出生率1位に輝いた。一時期、その他の各県市も出生の特効薬になると考えこぞってこれに倣った。しかし、実際には新竹の奇跡というものは、科学技術ブームによる新興富裕層というベースの上に出来上がったもので、決して若者たちの「生」への思いを呼び起こしたものではない。さらに忘れてはならないのは、メディアの注目を集める各種の富豪の結婚式などは、しばしば官僚たちが集いその費用もばかにならない。このように「結婚というのはこのようなものだ」という華美な意識がひけらかされることによって、市井の人々の結婚に対する素朴な幻想がぶち殺されているのだ。とりわけ、昨今のネットオタクたちについて、彼らのリアルな人生の中で関係を作り知り合う機会をいかに増やすかが、恐らく出産育児の補助よりもはるかに有効なものになるだろう。
もともと出生率が極めて低かったフランスだが、最近ではヨーロッパで最も出生率が高い国に変わっている。その秘訣は、家庭が子供の面倒をみることについて、政府が補助することを国家の責任だと捉えているのことだ。さらに、面倒をみる年齢を3歳に繰り上げようとしており、3歳から5歳の全ての子供が公立の託児所に入れるようにするという。また、フランスでは非婚による子供の割合が半数を超えているが、政府はこれを区別しない。仕事と家庭という難しい取捨選択をする必要がないため、フランスの働く女性たちが子供を産まない比率は極めて低く、また35歳以上の母親が新たに子供を産む割合も2割を超えている。この点を見ると、台湾の子供を産む女性の高齢化は、実は正常な現象だといえる。
政府は、結婚離れと出産離れという時代の総合的な合併症を認めねばならない。また、解決の手段について真剣に考え、安価な手当政策を再び打つようなことをしてはならない。台湾の高齢出産の増加は、これらの年齢層の女性にとって仕事と生活のバランスが安定に向かっていることによるものだ。政府がなおも「若い時期の出産が最良だ」と高らかに謳うのであれば、それはまったく現実を見ていないものだ!
★ 補記予定。

