7月24日から27日にかけて、台湾では市民をも対象とした軍民連合防空演習、萬安46号演習が行われました。台湾を4地区に分けて、4日間で順番に行っていくものですが、中部地区を対象に実施されるはずだった最終日は、台風5号の影響で中止になっています。
萬安演習の特徴は、単に防空警報を鳴らしたりスマホにメッセージを飛ばしたりするだけではなく、実際に「市民に」地下に避難させるところでしょう。「市民を避難させる演習」ではなく「市民に避難させる演習」という方が近くて、合図とともに市民は地下の避難施設に移動しなければなりません。上の国防部のリンク先にもあるように、従わずにいた場合には3万元から15万元の罰金が科せられるので、「市民を避難させる」要素もあるのだけれど、まずは行動させるところが流石というかなんというか。特に旅行者にとっては何が起きたのかさっぱり分からないでしょうから、日本の外務省の海外安全ホームページや交流協会のWebサイトでも注意喚起していました。まあ、だいたいこういうのって、見てほしい人ほど見ていないものなんだけど。ところで、日本でも地震や火災等を想定した避難訓練があちこちで行われますが、どちらかと言えば「そのときに参加できる人が参加する」任意の行事という色が濃いので、いざという時にどこまで役に立つのかなという気がしてなりません。非常時に即応した行動って、びっくりするほど何も取れない、というのは、自然災害の多い我が国の人であれば相当の割合で知っていそうなものなんだけれど。過料の類を科すことの是非は置いておくとしても、やはり30分だけであっても「みんなが動く」というのは大事だなと思いました。
この萬安演習、コロナ禍においても実施されていたのですが、2020年と2021年は実際に市民が避難する形式にはなっていませんでした。そうだったのか。去年のイメージがあったから、ずっとやっていたのかと思ってた。
今日から会議出席と要人との意見交換のため、台湾出張。河野太郎さんと来るはずが、コロナで急遽私1人に。。
到着早々、台湾北部の防空演習でサイレンが鳴り響き、30分間一切の外出が禁止に。台湾の危機感が伝わってきます。私は外交バブルでの入国なので、そもそも原則ホテルから外出できませんが。。 pic.twitter.com/nHR3wQjyu1— 鈴木馨祐(けいすけ) (@SuzukiKeisukeMP) July 25, 2022
いや、むしろ、なんで萬安演習の日に行ったんだろうって思うけど。
— やうち。 (@Yauchi) July 25, 2022
まあ確かに、短時間とはいえ多くの市民を狭い空間に集めるわけだから、2020年以降はかなり判断が難しくなるよね。2022年は、新型コロナの状況に加え、ロシアによるウクライナ侵攻という世界情勢の変化もあったから、より判断に悩んだことと思います。
そうした「高まる緊張感」という観点で、演習最中の台北を取材したのが24日のテレビ朝日、というか報道ステーションと大越アナ。
人口約250万人の台北市。24日午後1時半、警報が響き渡りました。1978年に始まった年に1度の大規模演習です。市民は地下や建物に避難し、車やバスは路肩へ止めるよう求められます。路上からは、市民の姿が消えました。
おいらも、地下の避難場所ってどれだけあるのか知らなかったのですが、これにはちょっと驚きました。一朝一夕でできるものではないし、今なおそれらを使うかもしれないと考えているところに、なお恐ろしさを覚えるのです。また、萬安演習だけではなく、民間団体による講座やイベントも取材しているのが目を引きますね。戦争は、もう廊下の奥よりも近い位置にあるのだという予感を伝えています。公式行事だけではなく、市井の目線から台湾の危機感を捉えその答え合わせを図るあたり、流石だなあ。
同じような視点で伝えていたのが27日の中央通訊社の記事。何気ない日々から緊急時への切り替わりは一瞬のこと。だからこそ危機と日常との間を行き来できる術が重要なのだと、そう言っているような記事題でした。
中身を見ていくと、大越アナのレポートに出てきた内容よりも幅広く、より濃い内容です。民間防衛の実情が取り上げられているので、読んでいるこちらも重たい気持ちになってきます。射撃訓練、アマチュア無線、応急処置。緊迫した空気が、文章や写真から漂ってくるようです。銃はさておき、こうした備えは日本にも無関係なのかな、と一瞬考えます。記事の最後にもあるように、市民が恐怖に震えるような段階ではないにせよ、あらゆる災難に際して、それらの技能が自身や周囲りの人の身を助けるのは間違いないわけで。