鬼が笑うか、蛇が出るか。

中国では、5年に一度の中国共産党大会が開かれていましたが、そんな中、ちょっとドキッとするニュースが先週21日にありました。

米海軍制服組トップのギルデイ作戦部長は19日、中国による台湾侵攻が起こり得る時期について「2022年や23年の可能性を排除できないと思う」と述べた。これまでの予想よりもさらに早い時期に触れ、警戒感を示した。米シンクタンクのイベントで語った。

中国外務省の汪文斌副報道局長は21日の定例記者会見で「台湾問題は中国の内政であり、この地域での挑発的な言動に断固として反対する」と述べた。武力行使そのものには言及しなかった。

台湾侵攻「今年、来年にも」 米海軍制服組トップが警戒 (共同通信)

この共同電、各地方紙の電子版に乗る際に、ヘッドラインの文字数制限もあって「台湾侵攻『来年にも』米海軍が警戒」みたいな感じで省略されてしまっていました。「2022年や23年の可能性を排除できないと思う」は、まさにその後ろの文面のように「これまでの予想よりも前倒しになるかも」というニュアンスですが、「今年、来年にも」は、「今まさに準備中」という感じが強くなり、かなりザワつく表現です。さすがにおいらもびっくりしました。

台湾ではそのあたりの報道はどうなのか、ちょっと見てみましょう、まずは20日の自由時報。直近では今回の共産党大会の人事を的中させたサウスチャイナ・モーニングポストから、20日の英文記事を引くような形で伝えています。記事題にもあるとおり「今年の可能性も排除できない」と、より差し迫った表現。ただ、どうも自由時報が引いているギルデイ作戦部長の話を見ると(SCMPは会員登録していないから読めない)、これまでも中国は実際に行動する前に姿勢を示し、約束を果たすというのがセオリーだったので、これを踏まえると、今年か来年に行動を起こす可能性を排除できない、というような感じ。何か具体的な兆候があるというよりは、習近平らの発言から読み取ったということみたい。それはそれで大切な判断材料だとは思うのだけれど。同じ自由時報では、22日に鄒景雯記者の署名記事でこのギルデイ発言を解説。ロシアによるウクライナ侵攻などを持ってきながら、高く評価すべきだと持ち上げています。

これに対し、陸委会の主任委員などを務め、現在は国家安全局長に就いている陳明通は20日、割合冷静な反応を示しています。そりゃ、国内向けの態度というのもあるでしょうが。21日の自由時報によれば、中国に勝つ可能性はなく、かえって国際的に孤立するだけだと警告しています。また、2023年というシナリオは、台湾を協議のテーブルに着かせるために武力による封鎖を図るのではないかと語るとともに、あらゆる対策と準備を行っていると述べています。もっとも、このところの発言のブレもあり、21日の聯合報ではかなり微妙なトーン。また、20日の中国時報では、国民党立法委員の頼士葆が、軍への志願者が目標の半数を割るような状況で本当に大丈夫なのか、中国が勝つにせよ勝たないにせよ、戦場となる台湾島では大きな被害が出るのは必至で、台湾を長期間守ることができるのか、と批判していると報じています。また、元国民党立法委員で中国廣播公司の董事長の趙少康は、2023年までの台湾侵攻は困難であり、2024年の総統選を有利に進めようと危機を煽る「オオカミ少年」だと21日の中国時報は伝えています。趙少康とか、久しぶりに名前を見ましたわ。中国国内と台湾の政治スケジュール上2024年までは動けないだろう、というのは、淡江大学の趙春山教授の話として、同じ中国時報が22日の記事でも触れていますね。ここまでくると、「中国時報、必死だな」となるのが東亜脳。趙春山はさらに、中国がいったん攻め始めたら速攻で来るだろうし、そもそも勝つ可能性がないと言い切れるなら、「武力で協議のテーブルに引き出される」こともないんじゃないかとツッコミを入れています。そうね、それはおいらも思ったわ。でも、中国が短期決戦を仕掛けてくるというのなら、それは2024年の総統選への影響すらさせない速度でやるだろうから、「2023年は無い」というのもまた説得力がないように思うのです。

結局、いったいどうなるかは習近平次第と言ったところでしょうか。答え合わせまでの時間がいささか短いのは、困ったところ。

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