明日は時雨か秋晴れか。

常々申し上げているとおり、台湾の政治に関する詳しい考察は、東京外大の小笠原先生のサイトを見てください。いいね? とはいえ、今年行われる政治的イベントとしては最大の山場を迎えるにあたり、全く触れないというのもどうかなと思うので、小笠原先生のサイトへにリンクするという予防線を張ったうえで、たまにはそういうお話を

台湾では来月、地方自治体(って言うとちょっと語弊があるけど)の首長や議員を一挙に選ぶ、いわば統一地方選挙があります。地方選とはいえ、直轄市長は政治的にも大きな影響力を持ちますし、何より蔡英文政権になってから初となる全国的な選挙、そして人によっては2020年の総統選挙にも繋がってくるので非常に大きな重みを持っています。この選挙、首長や議会議員など9種類の選挙があるので、「九合一」と呼ばれていますね。ただし、直轄市長選挙と各県長選挙のように重複しない選挙もあるので、1人の有権者が9回選ぶわけじゃないでっす。この九合一に併せて、国民投票(公民投票)も行われます。日本では「住民投票」と呼ぶことが多い、地域限定の投票も「公民投票」と定義されているので、ここでは「公民投票」で揃えておきましょ。

台湾の公民投票っていうと、「あれ? 立法委員選挙や総統選挙に併せてやるんじゃなかったっけ?」という記憶と「そんなひょいひょいやってたっけ?」という疑問が湧いてくるのですが、実は昨年の12月に公民投票法が改正されていて、公民投票の成立のハードルが下がっています(なお、全国的な選挙に併せて行うのは改正前から変わっていないので、前者の疑問はおいらの記憶違い)。先月の毎日新聞の記事から抜粋して引用。

蔡政権は市民の政治参加を促すとして、住民投票の請求に必要な署名を有権者の5%から1.5%に引き下げ、投票の成立要件も投票率50%から25%へ緩和する改正法を昨年、成立させた。台湾では過去にも数回、住民投票が実施されたことはあるが、投票率50%の壁に阻まれ、一度も成立していない。

今回は成立要件が投票率25%に大幅に緩和されたうえ、統一地方選と同日実施のため、成立の可能性が高まっている。

台湾:住民投票の請求相次ぐ 政権が要件緩和 (毎日新聞)

これは台湾の政治上、大きな改正だと思っています。記事にもあるとおり、公民投票が効力を発するためには、いくつか条件があるのですが、記事ではちょっと漏れているので補足。投票の前後とも「投票内容の提出」、「実施のための署名」、「実際の投票者数」および「賛成票数」という4つのハードルがあるわけですが、記事では1つ目がほぼザル化したこともあり飛ばされているし、後ろの2つはちょっと説明が雑。まず実際の投票までの関門である前半2つですが、「直近の総統選挙の有権者数の0.5%以上→同0.01%以上」および「直近の総統選挙の有権者数の5%以上→同1.5%以上」と、実施しやすくなっています。もっとも、これ以外に内容の審査もあるわけですが。一方、投票結果についての要件は、従前の「有権者の1/2以上の投票」と「有効投票の1/2を超える賛成」が必要とされていたものが、「賛成票が反対票よりも多く、かつ、賛成票が有権者の1/4以上」となりました。確かに、改正後の要件を満たすためには、どんなに少なくとも「賛成票が有権者の25%以上+反対票がゼロ」が必須なので、「投票率25%以上あれば成立しうる」であれば誤りではないのですが、「賛成が13%+反対が12%」だったら「賛成票が有権者の1/4以上」を満たさないので、「投票率25%以上が成立要件」というのは誤りなんじゃない? この辺、11日の朝日新聞はしっかり要件を書いています。最後の結論部分も重要な意味を持ちますが、これは後述で。

いずれも、投票の結果、賛成が反対を上回り、かつ有権者数の4分の1以上であれば、政権の判断を拘束することになる。

日本産は「核災食品」か 台湾、輸入の再開を住民投票へ (朝日新聞)

前回、2008年の立法委員選挙と総統選挙で行われたのべ4件の公民投票では、まさにこの「有権者の1/2以上の投票が要件」を逆手に取った棄権戦術が泛藍陣営を中心に繰り広げられました。4件とも賛成票が過半数(約58%~約94%)となったものの、公民投票の投票率は約26~約35%であえなく不成立。それじゃああんまりだというわけで、蔡英文政権下での改正に至ったわけですが、今度は国民党サイドが公民投票制度を逆手にとって蔡英文にプレッシャーをかけようとしています。これについても後ほど。

このように実施のハードルが下がると、雨後の筍のように提案がなされるのは大方の予想通り。中選会のサイトを見ると、1月以降、かなり多岐にわたる提案がなされています。日本での報道を見ると、やはりというか何というか、「福島県など5県産食品の輸入解禁」「国際大会や2020年東京オリンピックへの『台湾』名義での参加」という、割と日本人にも関係してくる議題が多く取り上げられている印象があります。

中選会は、10月2日10月9日および10月16日の公告で計9件の提案を投票に付すと公表しています。上で「九合一って言うけど、9回投票するわけじゃないから」って書いたけど、マジで9件の投票をすることになりそうです。

ちなみに、2日の公告の標題にもあるとおり、既に亡くなった人や代書の存在が全般的に明らかになっていて、特に後述する国民党の立法委員が提案したものは無効署名が1/3以上に及ぶなどしたため、中選会は割とブチキレです。これに対し、5日の自由時報によれば、国民党の曽銘宗が「2008年の公民投票で民進党が提案した議案も併せて追求するべきだ。もっと多くの無効署名があったのではないか」と言ったそうですが、その比較も違うんじゃないすか。

で、その9件をざっくり書くとこんな感じ。カッコ内は提案者の名前と、国政政党の党員であれば党籍も書いています。

  • 7:火力発電所の発電量について、「平均年1%以上の低下」方式で低減することに賛成するか? (盧秀燕・中国国民党)
  • 8:「いかなる石炭火力発電所や発電機の新設や拡張(深澳火力発電所の拡張を含む)を停止する」というエネルギー政策の確立に賛成するか? (林徳福・中国国民党)
  • 9:日本の福島第一原発事故関係地域である福島県と周辺4県(茨城・栃木・群馬・千葉)等の農産物および食料品の輸入再開を認めない政策を維持することに賛成するか? (郝龍斌・中国国民党)
  • 10:民法が、婚姻の規定を一男一女の組み合わせに限るべきだということに賛成するか? (游信義)
  • 11:中学校と小学校において、教育部や各学校が性別平等教育法施行細則に定めるいわゆる同志教育を行うべきではないことに賛成するか? (曽献瑩)
  • 12:民法の婚姻の規定に依らず、その他の形式で同性の二人が共同生活を営み続ける権利を保障することに賛成するか? (曽献瑩)
  • 13:「台湾」を正式名称として、全ての国際スポーツ大会や2020年の東京オリンピックに参加申請することに賛成するか? (紀政)
  • 14:民法の婚姻規定に基づき、同性の二人による婚姻関係の成立を保障することに賛成するか? (苗博雅)
  • 15:「性別平等教育法」の規定で明記されたとおり、義務教育の各段階で性別平等教育を行い、かつその内容は感情教育、性教育、LGBT教育などのカリキュラムを含むものであることに賛成するか? (王鼎棫)

大きく分けると、泛藍陣営が蔡英文政権への政策に待ったをかけようとしているのが7から9。そして昨年の司法院大法官解釈に反発するのが10から12で、さらにそのカウンターが14と15といった感じでしょうか。日本で最も話題になっている「台湾名義での東京五輪参加」が最も浮いている感じが否めません。

同性の婚姻や性別平等教育に関する内容は、今年5月のハフポストに記事があったので、そちらを参照くだしあ。個人的には、そもそも大法官解釈っていう制度自体が「ん?」っていう気がしているんだけど、それを正とする法秩序であるならば、解釈を否定するような公民投票が実施されるっていうことが輪をかけて「ん??」って感じ。

さて、建設中だった第四原発が事実上廃炉となり、エネルギー問題が喫緊の課題である中、「大気汚染をなくし、住民の健康を」という趣旨で石炭火力発電所の稼働を抑えよう、というやや緑寄りな提案は、それだけ替わりの電力確保手段の選択肢を狭め、隘路に追い込もうと狙いが見て取れます。もっとも、12日に中央通訊社がこれとかこれで報じているとおり、頼清徳・行政院長は立法院での答弁で、深澳発電所の改築停止や、台中火力発電所の4つの発電機を今後停止していくことを表明しています。文字通り、政治的な火消しの印象は拭えないですね。逆に言えば、公民投票という手段がそれなりに役割を果たすという証左でもあります。このあたり、あえて公民投票を使う藍側も、また乗っかる緑側に対しても「それって立法院不在じゃん?」ってところはありますが、ことを動かすためには誰かがケツを叩かないわけなので、大いにありかと思います。

また、福島県などからの食料品などの輸入禁止を継続するかどうかについても、先ほどの朝日新聞の記事にも

蔡英文(ツァイインウェン)・民進党政権は当初、輸入解禁に前向きだったが、国民党が「核災食品(原発事故にあった食品)」などと呼んで反対。政治問題化している。

日本産は「核災食品」か 台湾、輸入の再開を住民投票へ (朝日新聞)

とあるとおり、公民投票の結果を武器に、蔡政権の動きを止めようというわけです。これは国民党サイドとしてもかなり思いきったなあって感じ。

この点、上の方の朝日の記事の引用で「政権の判断を拘束することになる」とありましたが、もうちょっと詳しく書いておきましょ。公民投票法の規定上、仮に公民投票の内容が成立した場合には、法律の制定や廃止に関するものであれば、その後2年間は廃止や再制定ができなくなくなり、政策の方針に関するものであれば、その後2年間はその内容を変えるような政策がとれなくなります。

確かに、そのくらい拘束力がなければ公民投票を行う意味がない、とも言えるのですが、総統選の中間期であるこのタイミングで、残り2年間を丸々縛られるというのは与野党ともにけっこう重たいお話。なので、先ほどの火力発電所のように、泛緑サイドとしても一定の手は打たねばなりません。さりとて同時に行われる地方選挙も重要な戦い。むむむ。けっこう複雑だぞこれ。

6つ目の力が新たな道を示すのか、それとも既存の力に利用されるのか、同性婚の投票の件といい、隣が気になる秋になりそうです。

★ 補記(10/18 00:00)

16日に公告された2件に合わせて一部修正。

水平線トワイライト。

このブログでは基本的にオフラインでの話はしないことにしていますが、今回のお話はモバマスデレステ)の中のお話でもありながら、現実世界でのお話でもあるのです。と書くと、「ああ、やきうのお姉ちゃんの話か。PaP乙」みたいに勘違いされそうですが、違うっての。おいらはCoPだっての。いやいや、そうじゃなくて。今回は、Cuの子にスポットライトを当てたいと思います。

おいらが好きなCuの子を一人挙げるとすれば、乙倉ちゃん今井ちゃん、そして今回の工藤ちゃんでしょうか。っていうか、一人じゃないのかよ。節操ないうえに自分でも共通項がよくわかりません。さりげなく上でリンクしていますが、「しのぶリタニカ百科事典」なる ニッチな 丁寧なサイトまである工藤ちゃんですが、端的に紹介するならこちらのサイトから引くのがよさそうです。

子供の頃にテレビやラジオで流れていたアイドルの歌声の可愛さ、華やかさに憧れを抱いてアイドルを目指す。両親や友人から反対され、両親との喧嘩後に家出同然での状態で青森県から上京し、現在の事務所に所属しアイドルデビューを果たす。

工藤忍 (工藤忍Wiki ~しのぶリタニカ百科事典~)

単身で都会に出てきて、持ち前の真面目さと努力で夢を叶えるだなんて、まさにシンデレラストーリーじゃないですか。恐らく一定の年齢層以上の心は鷲掴み間違いなしです。工藤ちゃんは真面目っ子かわいい。

それでいて意外に抜けているところもまたいいよね。工藤ちゃんはポンコツかわいい。

そんな工藤ちゃんが、モバマスで初めてSRとして登場したのは2013年4月のSR[ハッピーマジシャン]。翌年8月にはSR[私だけのステージ]で二度目のSR化。この「私だけのステージ」は、2017年9月にデレステにも登場します。両親が住む故郷に少しだけ錦を飾りつつ、「昔からお気に入りの場所」を紹介してくれる姿は、本当にいい子だなあと思います。ここから着想を得て描かれた『その胸いっぱいの愛で』は、読めば涙で十三湖が溢れること間違いなしです。

ね、いいところでしょ。これがアタシの育った景色だよ。本当に大好きで、本当に大切な場所だから、いつか[P名]さんにも見てほしいと思ってたんだ。なんてことない海だけどねっ!

[私だけのステージ]工藤忍 (モバマス) (工藤忍Wiki ~しのぶリタニカ百科事典~)


どうかな、[P名]さん。アタシの故郷。華やかなものはないけど…人はあったかいし、景色も綺麗でしょ? ずっと、見てもらいたかったんだ!

[私だけのステージ]工藤忍 (デレステ) (工藤忍Wiki ~しのぶリタニカ百科事典~)

あ。やばい。すごく見たい。見せて見せて。

だいたい、おいらはこういう「秘密の景色」みたいなのにすごく弱くて、津軽海峡の対岸のバンドが「生まれた街のあの白さを、あなたにも見せたい」と歌ったのを聴いてコロッといってしまい、後年、資格試験の受験にかこつけて冬の函館まで行ったことがあります。残念ながら、「いつか二人で行きたいね」の部分はガン無視して一人旅だったんだんですけどね。

さて、問題はこの背景がどの辺か、というところです。もともと、「工藤姓だから津軽だろうなあ」とは思っていたのですが、「ハッピーマジシャン」で実家からリンゴが送られてきたのを見て、「やっぱり津軽か」とぼんやり思っていたところです。

ただし、この「工藤=津軽」という発想はどうやら誤りらしく、こちらの本によれば、「工藤=津軽」というイメージはあるものの、現実にはいわゆる南部地方にも多くいらっしゃるそうです。

石を投げれば、工藤に当たる。――これは、津軽に工藤さんが如何に多いか、というユーモア的表現であるらしい。

楠美鉄二『工藤物語』,東奥日報社,1981,pp154-155

さて、デレステで横長の画像が登場すると、たちまちこの場所に関する考察がなされ始めました。いちばん詳しいのは、おそらく神子田正治P(@hashiba_bigfour)のこの辺かと。この考察も含め、かなり細かい点に着目したり丁寧に分析していたり、恐れ入ります。モーメントは長いのでたたんじゃいました。「その他のモーメントを表示」を参照くだしあ。



これについては、おいらもデレステ登場後にちょっと考えていて、



と迷走していたり。それでも、神子田正治Pには申し訳ないけれど、おいらは小泊下前説を採ります。

「私だけのステージ」の背景で嫌らしいのは、地形を見ると「夕日の方向に向かっていく海岸線」があって、人工物でいくと「低めの防波堤」と「道路照明」、何より「やけに存在感のある灯台」があるという点。これはあくまでおいらの経験則なのですが(何のだ)、こういう背景を描く人って、「その場所ずばり」を描く場合は別として、自然の地形は比較的間引く傾向に、人工物は付け加えることが多いように思うのです。そして、モバマスにしてもデレステにしても、台詞で海や夕焼けの話はしていても、「目立ちすぎる灯台」には触れていません。ということは、強引に前向きに解釈すると、やはりあの絵の中で地形と太陽の位置関係に誇張はないけれど、灯台はちょっと怪しいぞ、と。ということで、背景の地形と海沿いの道の形状から、やっぱり下前漁港のあたりかなあ。と。

そうと決まれば、あとは実際に現地を見てみるのみです。というわけでまずは下見。行ったのは2018年3月です。なんで3月なのかって言ったら、下前の漁港のあたりから見て、権現崎に夕日がちょうど落ちるのがこの時期だからです。きょうび、各地の日の出日の入りの時刻や方角を調べるサイトなんていうのもあるから、大変助かります。うんうん。読んでいる人の半分くらいがドン引きする音が聴こえた気がする。それでもなんでも、こういう無駄なところこそこだわりたいよね。ね。

本当は工藤ちゃんの上京の逆ルートに合わせて公共交通機関で行きたかったのですが、ついでに行きたい場所もあるので、切符の確保とレンタカーを予約。日本海沿いだけあって、3月も終わりになるとほとんど雪もないのですが、海風が強い。ましてや17時台だし超寒い。気象庁のデータで確認したところ、この時間帯、小泊より少し南の市浦では気温1度台でした(翌日は6度くらいまで上がったみたい)。さすがに位置関係を合わせたとしても、工藤ちゃんのあの格好は無いですね。なので下見なのです。しょぼいカメラと残念テクに、間に合わせ仕事感満載の張り合わせを重ねた画像はこちら。むむむ。けっこう近くないですか(強引)。ほら、貼り付けてる部分あたりの左右をぶった切って詰めたら、いい感じになりませんか(超強引)。

時は下って9月の敬老の日の3連休です。下見の時点で割とイメージに近い画像が押さえられていたし、天気も上々だったので、完全に調子こいていたおいらは、レンタカーで龍泊ラインを南下しながら、とあることに気がつきました。「あ。先週実装されたARスタジオ機能を使えば、まんま『私だけのステージ』が作れるじゃん」と。しかしながらここで問題がいくつか。まず、おいらのスマホはオートモードに非対応。仮にマーカーを用意するにしても、こんな奥津軽でどうすりゃいいの。思えば、デレステのSRが公開されたのは9月の2週なので、その時点で調べていたら1年早く来ることだってできたはず。今回のARスタジオ機能も、うってつけの時期にお披露目されたんだから、ちょっと頭を働かせればいくらでも使えたのにね。はあっ。気を取り直して、9月の(ほぼ)同じ場所を撮ってきました。陽が落ちる頃でも気温は20度ちょい。これなら工藤ちゃんの格好でも寒くはないでしょう。型落ちのカメラとイマイチなテクに、やっつけ具合が随所に見える画像はこちら。なるほど、まるで成長していない。ちなみに、デレステの画像で右側に登場する街灯ですが、この画像の右手前にちゃんと立っています。なので、イメージとしては、街灯から水平線までほぼ180度の範囲をぎゅぎゅっと詰めると、デレステの画像に近くなるような感じです(ますます強引)。

ところで、この場所へ行く方法ですが、公共交通機関を使う場合は五所川原駅から小泊に向かう弘南バスしかありません。工藤ちゃんの上京は、きっとこの逆ルートだったんじゃないかな。小泊に行く系統はいくつかありますが、全て下前の集落を経由するのであまり心配しなくていいと思います。バスは津軽中里駅前も経由するものもあるので、ついでに津軽鉄道に乗るのもいいんじゃないでしょうか。なお、下前ではなくその次の立松というバス停で降りると、降りたら5秒であの写真の場所です。むしろ心配なのは、撮ったあとどうするか、という点ですね。9月に撮った時は、日の入りが17時45分頃なのでだいたい17時半前後から適当にシャッターを切っていました。その撮り始めの頃(たしか17時29分)に、五所川原行きの最終バスが立松のバス停を通過していったんですね。もしかすると、工藤ちゃんが上京する時も、サヨナラバスから見えたのはこの夕陽と故郷の家々だったのかもしれません。なので、おそらく今週くらい(日の入りは17時半頃になるけれど、もっと海側に日が沈む)じゃないと、撮ってからバスに飛び乗るというのは難しいと思います。つまり、車窓から遠ざかっていく故郷に思いをはせながらライオン海道をバスで行く、という追体験を希望するなら、前もって時間管理しないといけないし、現地で余裕をもって臨みたいという人は、やはりレンタカーがいいんじゃないかな。

というわけで、1枚の画像に魅せられて、100点の答えは導き出せなかったけれど、そこそこ及第点近くまでは追いかけられたんじゃないでしょうか。割と円満に幕を下ろすつもりでここまで書いてきたのですが、ここからひっくり返すというのもまたおいらの芸風です。さっきも上で取り上げた「ハッピーマジシャン」で、こんなセリフがありました。

リンゴ、美味しい?ふふ…アタシの地元のだから、当然でしょ

[ハッピーマジシャン]工藤忍 (デレステ) (工藤忍Wiki ~しのぶリタニカ百科事典~)

だいたいですね、リンゴの名産地って弘前市あたりの中南津軽とか、長野県とか、海から離れた平らな土地って印象があるじゃないですか。何度か小泊を含む北五津軽のあたりを見てきたけれど、リンゴ畑を見た記憶がありません。確認のため、農林水産省が毎年行っている作物統計調査から、耕地面積の内訳を見てみましょう。小泊村は平成16年に内陸の中里町と飛び地合併しているので、e-statにある平成15年までの数字を見ます。樹園地、つまりリンゴを含む果樹を栽培している畑は、平成5年以降ずっと「-」です。ということは、小泊でリンゴは採れません。あっれー。

ほ、ほら。SRが実装されたのは中里町と合併した後だから、「地元」=「今の中泊町」って解釈すれば成り立つじゃないですか。というか、広い意味で言えば工藤ちゃんは青森県全体を背負っているわけだから、青森のリンゴは、みんな工藤ちゃんの地元のリンゴなんですよ(さらに強引)。下手に事前に「地元のリンゴ」が出てきてしまっているがゆえに、「及第点近く」などと、おいらは小泊下前説をそこまで自信もって押せないのです。「シナリオ担当の人、そこまで考えてないと思うよ」なのかなあ。決め手を欠いた上に不整合まで出てくるなど、どうにも頼りない終わり方ですが、1年前のおいらがいいことを言っていたので、それで強引にまとめることにしましょ。

豪雨の日は学校に避難しないわけにはいかない。

また半年も間が開いてしまいました。日夜、尋常ではない暑さが続いていますが、今月頭に西日本を中心に大きな被害が発生した豪雨の話でも。

今回の豪雨では、台湾からの温かい支援も話題になりました。7日には蔡英文・総統がTwitter上で日本語を用いてお見舞いと支援の意思を表明し、翌週12日には、台北駐日経済文化代表処から日本台湾交流協会に義援金が送られました。交流協会経由というのが日台の微妙な関係を表していますが、それは置いておくとして。


一方、台湾での報道を見ると、あまり大々的に取り上げられているような印象はありません。被害が次第に明らかになっていたのとちょうど同じ頃、タイでは洞窟に閉じ込められた少年たちの救出が劇的な展開を迎えていたため、そっちに持って行かれたような感じでしょうか。

独自の視点で取り上げた記事を探すと、まずは10日の自由時報にあった林翠儀・駐日特派員らのもの。上に書いた日本への義援金に対し、日本のネット上で台湾への謝意が示されているということを伝えています。ただ、記事中に「日本最大のネット掲示板である『2ちゃんねる』やYahoo!ニュースのコメントでは」ってあるけど、うん、2chは、その、まあ、あれな。

また、実際に記者が被災地に入って取材した記事もありました。蘋果日報の記者が10日に広島入りし、2名が亡くなった府中町を取材しています。その様子を記した11日の記事では、下半身が泥まみれになりながら、ゴムボートを押して救出活動を続ける警察や消防の姿、なお危険があることから避難を呼びかける防災無線など、災害が「続いている」状況を伝えているほか、救助活動に随行して取材していたところ、浸水した住宅の2階からの救助を聞きつけ、女性2人を救出する場面に遭遇したことが生々しく書かれています。りんごは、さらに翌11日には8人が亡くなっている三原市に入り、12日の記事では、泥まみれになった商店や、機能できなくなった病院の状況を報じています。また、避難所で活動する自衛隊の姿や、前向きに頑張ろうとする被災者の声を連ね、最後にこう〆ています。「三原市について、日本人にとって最も知られているのは、タコと三原だるまだ。大雨と洪水の被害の後、三原市はまさにだるまの『倒れない』精神によって、廃墟の中から立ち上がろうと努力している」。え。そもそも「三原はだるま」って知らなかったし、起き上がり小法師と違って、だるまに「倒れない」とか「倒れそうになっても起き上がる」とかっていう意味はないんじゃないかな。と思っていたら、確かに三原観光協会のWebサイトは「タコとだるま」の画像があちこちにいるし、下半分にしっかりおもりが入っているらしく、「三原のだるまは、転んでも必ず起き上がります」って、めっちゃ書いてある。知りませんでした。ごめんなさい。同じ三原市の取材では、12日のこっちの記事も丁寧に市民の声を拾っていて、新鮮な驚きでした。海外のメディアだからこういうピンポイントな取材も逆に可能なのかな。

また、「災害は多いけど、災害に強い国」という日本の印象や、同じく豪雨や土砂災害の多い台湾との比較について書いている記事もいくつかありましたね。例えば聯合報の東京特派員である蔡佩芳は、「驚異的な降水量は、日本の防災体制を無力化した」と、ややドキッとするような書き出しで10日の記事を始めています。しかし読み進めると「今回の被害は、決して事前の予報の失敗によるものではない。7日正午頃には300万戸、800万人強に避難指示や避難勧告が出された。しかし実際に避難したのは1万人あまりであった。言い換えれば、勧告を聞き入れて避難したのは、800人中1人しかしなかったのだ」と、問題点を指摘。それでは、なぜ避難しなかったのか。記事では「避難しようかと思った時、既に家の前の道路が冠水していたので、このまま留まった方が安全だと思った」という被災者の声を引くなどしたうえで、こう簡潔にまとめています。「日本はこれまで、水害が比較的少なく、主だった災害は地震によるものであったため、政府や自治体、企業および市民に至るまで、水害に対する危機感がまったくなかった」と。耳が痛い痛い。さらに、昨今の異常気象によって日本でも過去に例のない大雨が記録されていることを踏まえ、これからの災害対策の計画には「地震+α」とすべきだと提案し、それは同様の災害頻発国でもある台湾も同じだと述べてます。むう。

投書記事にも目を移すと、10日の自由時報には、かつて経済部水利署の水利行政組長を務めていた張炎銘が、先島諸島や台湾の北側を抜けつつあった台風8号に絡めて警鐘を鳴らしていました。冒頭の「防災に関する科学技術の面では大国であった日本で、なぜこのように深刻な被害が生じたのか?」や、後半の「日本のような科学技術大国でまさか警報や避難の呼びかけを出さなかったとでもいうのか? それとも、災害を予測する情報を市民が持っていなかったのか、そればかりか最初からこうした情報を軽んじたとでもいうのか?」と、なんかもう、持ち上げてそのまま投げっぱなしジャーマン感がぱない。結びの「台湾は、最近の日本の経験を戒めとし、市民は、台風の警報や避難をないがしろにしてはならない」あたりは、もう本当にごめんなさい。似たような投書は、11日の聯合報にもありました。書いているのは、台湾の利水・治水の技術者の連合会の陳賜賢・理事長。

ちょっと強引に絡めすぎてないですかね、という投書や記事もちらほら。先に書いた蔡英文・総統のツイートに安倍晋三・首相が返信したことなどを挙げ、「台日関係をより良好にするため、福島県など5県を対象とした食品輸入規制を撤廃すべし」という11日の自由時報の投書は、気持ちはありがたいのだけれど、規制されている5県って今回の被災地とほとんど重なってない(輸入規制は、福島県、茨城県、栃木県、群馬県および千葉県の5県。7月豪雨では、負傷者が千葉県で、家屋の損傷被害が福島県と千葉県であったので、まったく重なっていないわけではないのねん)から、ものすごく一足飛びした感じが。

また、コラム記事でも18日の聯合報「即時短評」では、文部科学省が17日にパブコメを開始した「高等学校学習指導要領の改訂に伴う移行措置案」に激しく反応。いわゆる新高等学校学習指導要領の導入にあたり、移行期間である来年度からさっそく先行適用する内容の案が公表されたのですが、そこに領土関係の内容も含まれている、つまり「尖閣諸島は日本の固有の領土であって、領土問題は存在しない」という点も入っているわけ。これについて聯合報は、「蔡英文の支援表明に安倍晋三が感謝するなど、台日の友好関係が示されていた一方、教科書の問題に対して、蔡英文や外交部はだんまりだ」などと厳しい指摘。最後の「釣魚台の立場に関する我々の声がどんどん小さくなってしまうと、将来、本当に『共同開発』となった時に、実を勝ち取れうような大声を上げることができるのだろうか」というのは分からなくはないんだけど、せめてこういうときは切り離さないと、かえって禍根を生むんじゃないかなあ。

とは思いつつ、じゃあ日本を見た時に切り離せているかって言ったら、どうかなあ。困難な時の支えをいいことに、「どんな時でも日本を助けてくれる」と、嫌な言い方をすれば「日本の言うことに逆らったり、文句を言ってこない」と、そんな風に思っている人たちが絶対にいないかって言ったら、ああ、やっぱりちょっと自信がないなあ。