2017年のキーワードは「働き方改革」?

今さらながら、本年もよろしくお願いします。先に事務的な連絡を。ええとですね、エントリの通し番号で気がついた方もいるかと思いますが、先月23日の「歴史に沈みかけた者を助く遅すぎた船。」との間に、一つエントリが存在しています。何が隠れているのかというと、再開前のブログをご存じという奇特な方は憶えているかもしれません。以前は、毎年大晦日に、その年に取り上げ損ねたVOCALOID曲の話をしていました。何の供養だ、それ。同時に、「ちょっとだけ隠れてたVOCALOID曲10選」というのも上げていたのですが、2017年はこいつがボトルネックになっています。今の時点でさっぱり絞り切れていないです。とはいえ、ボトルネックは排除しなければなりません(米澤穂信脳)。とりまとめ終わったらお知らせしますね。

これまでだと、「前のエントリを片付けてから次の話を」というのがおいらの定石でしたが、ずるずると更新が先延ばしになるのはよくありません。新しい年の始まりは、やはり新しい気持ちで臨む必要があるのです。それは、いくら年賀はがきの抽籤が終わってしまった時期であっても。というわけで、恒例のアレ、台湾のACGサイト・巴哈姆特から、2017年のアニメ・漫画10大ニュースの話を。おい、内容に新しさが皆無だぞ。

2017年に巴哈姆特で扱われた3,567本のニュースから、選ばれたのは、以下の10本でした。日付と記事の題名は、巴哈姆特の当時の記事の日付と題名とのこと。

第10位:アメリカ版実写映画『Death Note』、ネットフリックスで予告編公開(06/30)
いわゆる「実写化する」ということに焦点は当てず、「さながら黒船のように、ネットフリックスが日本や世界の市場に進出した」という点で巴哈姆特は取り上げていますね。「ネットフリックスによってアニメ界の版図にどのような変化があるのか? 今後も注視し続ける価値がある事象といえよう」。
第9位:『けものフレンズ』、新作は制作陣を一新 公式サイトで公表(09/27)
2017年のアニメ界最大の大番狂わせ作品、巴哈姆特も「ダークホース」と表現して、予想外の好成績を称えています。そして秋には一転してこの騒動、さて二期はいったいどうなることやら。
第8位:ソニーピクチャーズ、『スパイダーマン』の悪役である「ヴェノム」のスピンオフ作品を来年秋に公開と発表(03/17)
2017年のアメコミ枠のニュースはこれ。アメコミが原作の作品でした。これについては後述で。
第7位:台湾史上最大のガンダム展、双十節の連休に登場 6mの巨大なガンダムとザクが台北の統一百貨店に(10/09)
2017年も数多くの実物展示企画が台湾に上陸しました。2月には台北花博公園の流行館で『ソードアート・オンライン』展が、9月には台北の靠邊走藝術空間(Wrong Gallery Taipei)で士郎正宗展が開かれました。おいらが最も驚いたのは、3月から台北の国立台湾科学教育館で開かれた『君の名は。』展ですね。
第6位:ディズニー、524億ドルで21世紀フォックスを買収 『X-MEN』『デッドプール』『ファンタスティック・フォー』はマーベルに復帰(12/15)
あれれ。もともとマーベルってディズニー傘下になっていなかったっけ、と思ったら、20世紀フォックスにライセンスがあったのね。
第5位:『マジンガーZ』の新作映画が正式発表 40年ぶりにスクリーンに再登場(01/26)
もとより、日本のACGの話題であっても巴哈姆特で知る、という事例はたくさんあったのですが、『いちご100%』の続編はこの記事の関連ニュースで初めて知りました。
第4位:ディズニー、『ムーラン』の実写版映画で劉亦菲を主演に 公開は2019年予定(11/30)
本文では「2017年は日本の有名漫画『鋼の錬金術師』も実写映画化、世界190か国で上映予定で、台湾にもまもなくやってくる」と煽っており、なんというかこう、ごめんなさい。なお、ネットでは事前に「胡婷婷が主役では」といううわさがあったので、記事の中でも触れられてます。
第3位:『ドラゴンボール』のブルマ、『きまぐれオレンジ☆ロード』鮎川まどかなどを演じた鶴ひろみ、高速道路上で亡くなる(11/17)
訃報が3位に。2月に世を去った『孤独のグルメ』の作画を務めた谷口ジローや、93歳の大往生だった『老夫子』の作者、老夫子の名前も挙がっています。「人の命が、このように無情であるがゆえに、自分自身が作り出す自らの輝かしい日々を、その時々に大事しなければならない」というのはまさにその通り。
第2位:『るろうに剣心』の作者、和月伸宏が児童ポルノDVD所持の疑いで書類送検(11/21)
「彼の作品にロリっ子は少ないが、児童ポルノDVD所持で逮捕されたのは事実」とか「単純所持の罰金は最高で100万円なので、彼にとっては微々たる金額にすぎないが、世論の圧力と作者のイメージはそう緩いものではない」とか、巴哈姆特もけっこう厳しめ。
第1位:宮崎駿が正式にカムバック! ジブリ公式サイトが「宮崎駿最後の長編作品」制作と発表(05/19)
関連ニュースには、冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』34巻発売の記事が。どういうことかと思ったら、「『引退したいと思っていたけど、またやりたくなった!』『最近ようやく再開したけど、また休みたくなった!』 業界で最も信用できない2人と言われている、アニメの大家宮崎駿と漫画家の冨樫義博が2017年のニュースの1位に輝いた」っておい。高齢者の労働期間延長と、若者(か?)の労働時間削減、うんうん、どちらも昨今の社会情勢そのままですね。(ぼう

記事ではさらに、十大ニュースのほかに「国産」という項目を設けて、2017年に新たな一歩を踏み出した台湾国産アニメを取り上げています。記事にもあるように、過去に個人で制作されたショートフィルムが長編アニメとなった『幸福路上』、単発TVアニメから映画化され金馬奨では優秀長編アニメ部門にノミネートされた『小猫巴克里』など、2017年暮れから2018年頭にかけて劇場公開される作品ばかりなので、幸先いいスタートを切ってくれるといいですね。

中国ではACG分野での日本離れも加速しつつある昨今ですが、ご覧のランキングのとおり、巴哈姆特ではまだまだ日本びいきが続きそうな予感。とはいえおいらの予想はたいてい外れるのです。さて、2018年の十大ニュースはどんな顔ぶれになるんでしょうか。

オリコンで最初に1位を取ったのは7年前。

さあ、残り数時間で年も改まろうとしています。Wordpressに移行した後の2月に「また「はじめまして」のご挨拶。」からこのエントリまで、今年は11本ものエントリを連ねることができました。お付き合いいただきありがとうございます。

思っていたよりも更新していたなあと少し驚いていますが、その中でも特に反応が大きかったのが10月の「ジルコニアの瞳は濁らない。」なので、個人的にはちょっと「解せぬ」な思いも。ACGのブログちゃうからな、な。

そこら辺の意欲は来年に繋ぐとして(フラグ)、一年の締めくくりでも。中断前は毎年やっていた恒例のアレ、こと「今年紹介できなかったVOCALOID曲」です。っていうか、今年は全くニコニコ動画を貼っていなかったんじゃないかしらん。そういう意味でも以前との違いが垣間見えますね。おいらだって成長しているんです。たぶん。

★ サラバイサラバイ(とあ)

謎の中毒性で、今年いちばんループして聴いていたような気がします。明るい曲のはずなのに、けっこう衝撃的な歌詞。「ぜんぶ ぜんぶ 落っこちてくね」で、なぜかトラウマ映画『紀子の食卓』を思い出すのはおいらだけですかそうですか。

★ ニア(夏代孝明)

こちらは、今年最も琴線に触れた曲です。物語性に富んだ歌詞が、PVで加わるSF要素でさらに昇華したような感じもいいですね。

★ 砂の惑星(ハチ)

今年のVOCALOID曲について書くのであれば、この曲に触れるのは必然としかいいようがありません。突き放すようなメッセージが歌詞やPVに散りばめられ、初音さん10周年のメモリアルイヤーに一石を投じたのは、さすがハチさんという気がします。おいらはあまり共感できなかったんだけどね。それでも「ははあ」と思ったのは、「戸惑い憂い怒り狂い」を経て「たどり着いた祈り」という点でしょうか。なるほど歌はやはりそこに帰着するんだね。

★ インナーダーク(TOKOTOKO(西沢さんP))

今年の曲の中で、おいらがカラオケで歌った回数ナンバーワンはこれ。「不安は飼い慣らしていけ 憂鬱はぶっ飛ばしていけ」の歌詞は、声に出して歌いたい日本語として推奨でっす。

★ 組曲『初メテノ音』アペンド(snow)

先にも書いたとおり、今年は初音さんの発売から10周年の記念の年、いやもう、絶対にsnowさんはやってくれると信じていました。前作に比べて収録曲の範囲が広いから、はたしてどこまで受け入れられるかも微妙だけど、再生数の多い曲をなるべく網羅しようとしたあたり、脱帽するかありません。ご存じのとおり、おいらって雑食というか「ミリオンなんか知るかボケ」的なところもあるので、実は知らない曲も多かったり。というか、後半5年はかなり怪しいです。以下余談なので、とにかく聴いてみるのをオススメします。

  • [37]ロンリーガール(2010)→[38]ローリンガール(2010)で油断したところで[39]Dear(2008)は不意打ちすぎたし、使用曲のマイリストのコメントで涙不可避。
  • [61]from Y to Y(2009)と[62]フタリボシ(2010)の重ねは、この時代がいちばん好きだったのに全く考えたことがなくて新鮮な驚き。
  • [71]ブリキノダンス(2013)→[72]VOiCE(2008)の流れは、普通に考えて卑怯。
  • [103]みんなみくみくにしてあげる♪(2012)→[104]Tell Your World(2011)→[105]StargazeR(2008)→[106]ODDS&ENDS(2012)→[107]ブラック★ロックシューター(2008)→[108]39(2012)の流れ、特にStargazeRを挟むのはどう考えても古参いじめすぎるだろ常考。

骨盤Pの『StargazeR』を知ったのは、恥ずかしながら2010年のコンピレーションアルバム『EXIT TUNES PRESENTS Vocalolegend feat. 初音ミク』。組曲アペンドにも取り上げられている『SpiCa』や『1925』『VOiCE』も収められている名盤です。そのCDから数ヶ月後、次のコンピレーションアルバム『EXIT TUNES PRESENTS Vocalogenesis feat. 初音ミク』は、オリコンのウィークリーチャートで1位を獲得しました。おいらはこっちのCDも好きですね。これは当時、けっこう衝撃でした。どのくらい衝撃だったかと言えば、ほぼ日Pが曲を作ったくらいの社会現象です。

変化球すぎて、もはや祝っているのか祝っていないのかよくわからないのが、ほぼ日Pクオリティ。そんな7年前の歌では、発売から10年後の世界をこう表現していました。「2017年のこの世界では 私のこと誰も知らない」「オリコンで1位を取ったのは7年前」と。前者はほぼ日Pも「流石にそれはないからあえて」書いたようなフシがありますが、さて後者はどうでしょう。ちなみに、この部分、半分合っていますが、半分間違いです。このほぼ日Pから約8ヶ月後、『EXIT TUNES PRESENTS Vocalonexus feat. 初音ミク』がオリコン1位に輝いています。なので、この10年を振り返ったうえでの正しい表現は、このエントリの題名ってことで。

そして、最後には毎年恒例のアレ、こと「VOCALOID曲10選」です。中断前最後の年だった3年前と比べると、やっぱりというか何というか、速い曲が苦手になってきているのと、ONEがかなりお気に入りになったところが特筆すべき点かな。最終的に絞る直前の曲と、ここに挙げた曲を合わせたリストと併せてどうぞ。

 

こんなおいらですが、2018年も引き続きよろしくおながいします。

来年はどんな曲に出会えるんでしょうか。じゃなかった、どんなニュースに出会えるんでしょうか。皆さまどうかよいお年を(ここまでテンプレ)。

歴史に沈みかけた者を助く遅すぎた船。

前回の「『ムダヅモ無き改革』に登場した蔡英文らしき何か。」に対し、「そうじゃないだろ」的な電波を受信しました。内容が迷走するブログで申し訳ありません。っていうか、以前から全く統一できていなかったような。

そういうわけなので、リアルの方の蔡英文の話でも。労働基本法改正の件も考えたのですが、別の話題にしましょう。どちらにしても日本ではあまり報じられていないので、おいらの備忘も兼ねたエントリです。

今月5日、台湾の立法院で、「促進轉型正義條例」が可決成立しました。新字体で書くと「促進転型正義条例」、「条例」とありますが、日本の地方自治体が定める条例と違い、台湾の条例は特別法という意味を持ちます。そして「転型正義」ですが、「移行期正義」という日本語がもっぱらあてられています。その先はぐぐれ。では、ここで言う「移行期正義」の対象は誰か。東アジアでこういう話題が出るとちょっと身構えてしまうのが東亜+の悪い癖ですが、日本が台湾を占領していた時期ではありません。条例案が三読を通過した5日の聯合報に全文が出ていますので、まずはここで目的や定義を確認しましょう。

条例の目的は第1条の前段に、「移行期正義を促進し、自由で民主的な立憲主義の秩序を実現するため、この条例を特別に定める」とあります。また、「権力と威力で統治された時代に、こうした秩序に反した違法行為とその結果」が対象であるとされていますが、この「権威で統治された時代」は、第3条で1945年8月15日から1992年11月6日を指すと定義されています。始期は日本人ならおなじみの日ですね。陳儀らが台湾に上陸した日でもなければ、光復の日でもないし、後述と対になる戒厳の発令日でもないというのは不思議な感じがします。そして終期ですが、条例草案の段階では1991年4月30日、中華民国憲法を臨時的に上書きしていた動員戡乱時期臨時条款が効力を持っていた最後の日でした。台湾省に対する戒厳令は1987年7月に解除されていたので、それよりも後に残っていたこの日付にしようとしたのはいいのですが、実は台湾省以外の金門馬祖や南沙東沙は(発令時は海南特別行政区だったので)その時点でなお戒厳のさなかでした。これらの島々で戒厳が解除されたのが、1992年11月6日というわけ。この点、過去の権利回復条例や補償条例とも一致させるという意味もあるのでしょう。

具体的な動きとして、行政院に「促進転型正義委員会(促転会)」を設置し、「過去の政治的資料の公開」「過去の権威主義の象徴の排除と負の遺産の保存」「過去の司法的判断の是正と歴史の真相究明による社会的和解の促進」「不当な党財産の処理」を行うことが第2条で定められています。ここで言う政治的資料には政府だけではなく政党やその付属組織(実質的に政党の支配下にある組織を含む)が含まれ、さらに既に無い組織も対象となります。

どう見ても中国国民党政権の施政と党財産を狙い撃ちした法律ですが、いちおう促転会の委員には「同じ政党の者が3人を超えてはならない(つまり民進党にしろ国民党にしろ単独では3分の1まで)」「片方の性別が3人より少なくなってはならない」という配慮がなされています。その他細かい制度は先ほどの聯合報の条文を読むか、5日の中央通訊社の記事あたりがよくまとまっているんじゃないかしらん。

とはいえ、やはり国民党も面白くありません。6日の東森の記事には国民党からの反対声明を紹介しています。まあ「自分たちで正義を定義するとは何事か。数の暴力で押し通すな」は、「お前が言うな」感があるので置いておくとして、「行政機関が司法権を持つような制度は五権分立に反する」「日本統治時代に受けた不正義には手をさしのべないのか」あたりはふむふむ。

6日から7日にかけての自由時報のこれとかこれとかこれを見ると、「中山」や「中正」と名のついた通りや学校名などを改称するのかどうか、という議論が目立っていますが、興味深いのは陳水扁の子である陳致中が6日に更新したFacebookの内容。7日の自由時報の記事によれば、「名前を変えたり銅像を撤去することが重要ではない。肝心なことは、心の中に棲む権威独裁の魔物を取り除くことによって、歴史の真相を明らかにすることだ」とのこと。そらそうね。元総統の親族といえば、蒋介石のひ孫にあたる蒋萬安の投票行動も6日の自由時報にあって、こっちはこっちで興味深いでっす。もっとも、彼からすると、祖先がどうこうというより党としてどうこうっていう方が強いような、でも台湾だとそうもいかないのかなとか思ったり。

陳水扁の名前が出たので歴史をちょっと遡ると、移行期正義に関する法の制定は陳水扁政権下の2003年以来の民進党の悲願でもありました。当時の民進党は立法院で少数与党。2016年の選挙でようやく現体制になってから満を持しての成立です。このへんは5日の中央通訊社の記事に年表があるので、そっちを参照のこと。ようやく漕ぎ出せた歴史的な一歩は、単に党の面目や政権の支持率浮揚だけで終わるのではなく(それすら果たせるのかどうかもわからないけれど)、人々の過去を掬い、また救うことができるところまでたどり着けるのかしらん。